トランプ氏「ゴルフ外交」に秘めた意外な熟慮 ああ見えても「マメな人」一流のおもてなし術
つまり、トランプ大統領にしてみれば、「ジュピター」は自慢の「新作」で、それをぜひとも安倍首相に見せたいし、世間にもその存在をアピールしたかった。だが、わがルーツ、わがホームである「ウエストパームビーチ」もやっぱり見せたかったのではないかと想像できる。
さらに想像を膨らませれば、「ジュピター」は帝王ニクラスの設計ゆえに、戦略性が高い難コースだ。「ウエストパームビーチ」のほうもチャンピオンシップコースの18ホールは難しいのだが、「トランプ9」と名付けられた9ホールはエグゼクティブ向けの易しいコース。
コースと同伴者選びに見るトランプ大統領の狙い
難しい「ジュピター」でお疲れになった安倍首相を少しいい気分にさせ、おもてなしするために、「ウエストパームビーチ」へハシゴしたのではないか。それもまた“マメなトランプ”の気遣いだったと考えると納得がいく。
さらにいえば、18ホールだけでは「足りない」と感じるほど、トランプ大統領と安倍首相の間に連帯感や仲間意識が芽生え、「もう1軒行こうぜ」という感じでハシゴでゴルフをする流れになったとも考えられる。
米国の大統領には代々ゴルフ好きが多く、在任中にウイルソン大統領は1200ラウンド、アイゼンハワー大統領は800ラウンド、オバマ大統領は300ラウンドしたという数字が出ているが、トランプ大統領も負けず劣らずのゴルフ好き。いや、その熱狂ぶりは群を抜いている。
その熱狂ぶりを理解し、一緒に熱狂してくれる相手として、安倍首相は「この人こそ」と思われたのではないか。だからこそのハシゴだったのではないか。そんなふうにも考えられる。
それにしても、日米首脳のゴルフ外交に呼ばれたプロゴルファーが、なぜ南アフリカ出身のアーニー・エルスだったのかが、とても気になった。フロリダを本拠にするプロゴルファーは山ほどいる。ジュピターやウエストパームビーチ一帯にはタイガー・ウッズをはじめとする一流選手、有名選手の豪邸が立ち並び、エルス以外にも候補となりうる選手は多数いたはずだ。
しかも「Make America Great Again!(アメリカを再び偉大な国に)」と叫ぶトランプ大統領が、このゴルフ外交に同伴させたのが、なぜアメリカ人ではなく、南アフリカ出身のエルスだったのかを考えてみた。
私なりの答えはこうだった。
エルスの長男ベンくんは、幼い頃に自閉症と診断された。以来、エルスは自閉症の人々のためのチャリティ活動に精を出し、自閉症に対するさまざまな医学的研究・開発のための財団も設立している。
ここ数年、エルスはチャリティ目的のゴルフトーナメントを独自に開催し続けており、そのチャリティゴルフをスポンサードしている1人がトランプ大統領なのだ。
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