安倍首相は対トランプ異種格闘技に勝てるか 「日本も米国と同じ金融政策」は通じない

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これに対して2013年4月に始まった日銀の「異次元の金融緩和」は、すでに3年10カ月に達している。つまり、「期間」の面で「異次元の金融緩和」はすでに米国がリーマンショック後に実施した3回の量的緩和を超え始めている。

その結果、日本のマネタリーベースは昨年12月時点で426兆3922億円に達し、同時点における米国のマネタリーベース3兆5316億ドル(年末時点の1ドル=117円11銭で換算すると413兆5830億円)を上回ってきている。

さらに、米国のマネタリーベースの規模は名目GDPの約19%程度であるのに対して、日本のマネタリーベースは名目GDP537兆3020億円の約80%に達している。

つまり、「期間」の面でも「規模」の面でも日本が行っている量的緩和は、米国がリーマンショック後に行った3回のQEを上回るものになっている。トランプ政権が「期間」の面でも「規模」の面でも、米国は日本に米国と同等以上に量的緩和を実施する機会を与えてきた、それを生かせなかったのは日本側の責任であると反論してきたとしても、不思議なことではない。

安倍首相が「異種格闘技」で負けないためには?

安倍首相は、日米首脳会談では事実に基づいて誤解を解いていくという方針だ。当然こうした事実を突きつけられたときの反論を準備しておかなければならないが、はたして用意はできているのだろうか。日本だけが「通貨安誘導を繰り広げている」ことや、日本だけが「長い間通貨安誘導を繰り広げている」という不都合な事実だけが露呈してしまうことは、日本にとって大きな打撃になるはずだ。

「リーマンショック以降、米国も、われわれと同じ政策をやり、経済を引き上げ、リーマンショックを乗り越えた」という安倍首相の反論は、通常レベルの政治家同士の世界では通用するかもしれない。

だが、トランプ大統領との交渉で通用するものではない。重要なことは、ビジネスマン出身のトランプ大統領と、「政治一家」で育った安倍首相の会談は「異種格闘技戦」になるという認識を持つことだ。そして、「異種格闘技戦」では、自分のやってきたルールが通じると信じ込むことが、敗北の要因となることを肝に銘じる必要がある。

近藤 駿介 金融・経済評論家/コラムニスト

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こんどう しゅんすけ / Shunsuke Kondo

1957年東京生まれ、早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、総合建設会社勤務を経て、31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社。株式、債券、先物・オプション取引等を担当した後、野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍。再び、野村アセットに戻ってからは、担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出されるなどファンドマネージャーとして活躍。その他、運用責任者として、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ、1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーとなる。現在は金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく、合同会社アナザーステージを立ち上げ、会長兼CEOとして、一般向けの金融セミナーや投資セミナーなど専門家向けセミナー等も開催中。自身が手掛けるメルマガ『マーケット・オピニオン』は、個人投資家から圧倒的な支持を得る。

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