もうみそぎは済んだ?オリンパスが巨額増資 財務体質を一気に改善、反転攻勢に打って出る。

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医療事業で時間を買う

業績も底を打っている。デジカメ事業は赤字が続くが、世界シェア7割を誇る消化器内視鏡を中心とした医療事業は絶好調。会社側は13年度の純利益を前期比3.7倍の300億円と見込む。

医療事業のさらなる拡大には巨額の投資が不可欠。オリンパスは今回の増資で調達する資金の大半を、医療事業への投資に充当する。まず念頭にあるのは稼ぎ頭である消化器内視鏡の強化だが、「外科用内視鏡など処置具分野でM&Aも含めた積極経営を進めるための資本拡充にもつながる」(BNPパリバ証券の簡野邦彦アナリスト)と、“時間を買う”選択に期待する声もある。

処置具の分野では独カールストルツなど海外メーカーの勢力が強く、オリンパスのシェアは2割程度。一方、市場成長率は消化器内視鏡が年平均10%程度なのに対し、外科用は同15%程度と、より高い成長が見込まれる。現在の資本状況では有望なM&A案件が出た場合でも対応は困難だが、公募増資により資本が拡充されれば選択肢は増える。

大株主の中には、今回の増資を非難する声もある。「増資ではなく、利益の積み上げによって資本改善すべき」と、ある海外投資家の代理人は憤る。巨額の増資は株主価値を希薄化させる懸念もあるからだ。

ただ、11%強の株を保有する筆頭株主のソニーは「あくまでオリンパスが決めたこと」と静観姿勢。確かに増資が完了すれば、同社の保有比率は10%弱に下がる。だが、増資によってオリンパスの財務状況が改善し、成長が加速すれば、保有株の含み益は一段と膨らむ。合弁会社で進めている医療分野の新製品開発にもプラスに働くとみられる。

同時期に大型増資を発表した大和ハウス工業の株価が翌日終値で9.4%も値下がりしたのに対し、公表翌日のオリンパス株は5.4%の下落にとどまった。その後は反発するなど、株式市場の反応もまずまずだ。

公募増資で調達する資金でさらなる成長につなげることができるかが、今後の経営課題となる。

(撮影:尾形 文繁)

週刊東洋経済2013年7月20日号

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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