アマゾンらが巻き起こす「家事革命」の凄み CESでも最新家電が大人気のワケ
さらに「Amazon Dash Replenishment(アマゾン ダッシュ リプレニッシュメント)」に至っては、1クリックさえ必要としない。商品がなくなりかけると自動で再注文する魔法のようなクラウドサービスだ。米国ではブラザーと提携し、インクを自動発注するプリンターを販売、人気を博している。こうしたサービスが威力をより発揮するのが、消費量を忘れがちな商品だろう。日本ではアイリスオーヤマが、炊飯回数や量を検知しコメが払底する前に自動で発注する炊飯器を開発中だ。
他にも三菱レイヨン・クリンスイでは、フィルターを通った水の量をもとに、これまで分かりづらかったカートリッジの交換時期をスマートフォンのアプリに通知し、購入できる浄水器を年内に販売予定だ。
生活必需品など、消費者が購入に思い入れをあまり持たない品を「低関与商材」という。ダッシュボタンやダッシュリプレニッシュメントは、カートリッジや洗剤などの低関与商材を1クリックや自動再発注でより「無意識に」購入させる仕組みなのだ。書評サイトHONZ代表の成毛眞さんは、これらのサービスが生まれたのは当然だという。
家事も低関与生活へ
「消費者が低関与商材を買うかどうかは広告、特にテレビCMによって決まると言われています。テレビ離れが進んだことで、マーケティングに惑わされない人が増えてきたんですよ。すると気づくんです、洗剤の種類によって洗い上がりに差なんか出ない、洗剤はわざわざ選ぶべきものじゃないって」
これは米国ではすでに起きている現象だ。テレビから日用品や消耗品のCMが減り、店舗で商品を選ぶ楽しみを見いださなくなった消費者は、家でボタンを「ポチる」。ボタンの電池が切れた後も自社製品を選んでもらうため、メーカーはアマゾンに広告を出し続けるだろう。すべてがアマゾンのプラットフォーム上で繰り広げられる「ダッシュボタン戦争」が起きるのは5年後だと成毛さんは予測する。
そしてこの消費行動の変化は、買い物だけではなく家事全体の、いやライフスタイルそのものの価値観を変えるという。
「どうでもいいや、という低関与の閾値が上がって、消耗品の買い物だけじゃなく家事全体を適当で良しとする“低関与生活”に移行していくはずです」(成毛さん)