首脳会談で安倍首相が反撃するのは困難だ 今は「相場の急変」に備え現金を厚く持つべき

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日本側も、トランプ大統領側からかなりの圧力を受け始めている。トランプ大統領の日本への風当たりは、市場の予想以上である。安倍晋三首相は今月10日の日米首脳会談では、「正すところは正し、反論すべきところは反論する」と繰り返している。

トランプ大統領は米国の自動車産業が日本で低迷していることを取り上げ、日本を批判しているが、事実を正しく理解していない。「米国第一主義」を貫くうえで理解していないふりをしている可能性もあるが、とにかく日本側から少しでも譲歩を引き出し、利益を取ろうというのが基本的な戦略なのだろう。

自動車産業の実態については、すでにマスコミ等で報じられているように、日本に「落ち度」は全くないといってよい。結局のところ、米国の自動車メーカーの力不足を棚に上げて、文句を言っているに過ぎない。

このことをまともに指摘すれば、トランプ大統領は激高し、議論にならないかもしれない。本来なら、日本側が米国の主張をすべて受け入れる必要もないはずだ。間違ったことをしているわけではないのだから、堂々と議論すればよい。難しいかもしれないが、これまで米国の言いなりだった部分を改善する良いきっかけになれば、むしろ日本の、世界におけるプレゼンスを上げる好機かもしれない。

もっとも、資源に乏しく、安全保障を米国に依存する日本が正論を振りかざすのはなかなか難しいかもしれない。ここが米国と日本の大きな違いでもある。最後は「大人の対応」をせざるを得ないだろうが、今回の安倍首相の対応次第では、今後の政局や選挙戦にも影響が出るだけに、安倍首相もきわめて難しい対応を迫られそうだ。しかし、最近は安倍首相も外交力を付けている。意外に渡り合い、トランプ大統領から高い評価を受けることもあるかもしれない。両者が好きなゴルフでもしながら、胸襟を開き、新しい日米関係像を作り上げることを期待したい。

為替は日米首脳会談後どうなるのか

一方、市場関係者から見れば、気になるのは為替相場だ。日米首脳会談後、為替は一段と円高に振れるのだろうか。この点については、一国のトップとして為替に触れたりするのは従来ならあり得ないのだが、トランプ大統領の発言は実はあいまいであり、抽象的である。問題があるのなら担当者を通じてもっと明確に指摘すべきだが、今のところはそれがない。これは、為替問題に限らず、他の問題についても基本的には同じようなスタンスである。明確な根拠を示さず、あくまで自分の希望を押し通すことを前提とした発言が多い。

彼の著作では、為替問題については「通貨安で日本と中国は米国の利益を取り上げている」の一点張りである。トランプ大統領が崇拝するレーガン政権時に起きたことは、最終的には米国によるドルの大幅な切り下げだった。米国は当時、自国の「力不足」を結果的にドル安で解決した。

現在は当時と条件が違うわけだが、こうした過去について言及せず、現状だけを取り上げて自らに有利に持っていこうというのがトランプ流の交渉術なのだろう。ただし、為替については、日本側も弱いところがある。なぜなら、突っ込みどころが満載だからである。

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