首脳会談で安倍首相が反撃するのは困難だ 今は「相場の急変」に備え現金を厚く持つべき

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もし、筆者がトランプ大統領の立場なら、具体的に日本の為替政策について突っ込むだろう。特に日本銀行の金融政策については、「突っ込みどころ」しかないと考える。なるほど黒田東彦総裁は、「日銀は円安にするために政策を行っているわけではない」としている。

しかし、為替相場については「円安は結構なこと」と何度も発言している。結局のところ、これまでの政策は、円安・株高を誘発しながら、景気を回復させることを優先したのは事実上疑いの余地がないのではないか。黒田総裁は決してそれを認めないだろうが、それ以外に答えはあるのだろうか。「日本は政府と日銀が円安誘導を行い、それにより利益を得てきた」とトランプ大統領に突っ込まれても仕方がないと考えるのは、筆者だけではないはずだ。

トランプ大統領の発言に振り回されるな

だが基本的に日本側が円安にして景気・経済を立て直すことを許されたのは、オバマ政権時代の話である。また、菅義偉官房長官が「財務省や金融庁、日銀は常に為替相場について意識している」といった発言をしているが、これもオバマ前政権時代で通用した話である。

相手が変われば、政策も変わらざるを得ない部分が出てくる。トランプ政権と為替政策について果たして冷静な議論ができるのかは不明だが、この点について、トランプ政権内を納得させるのはかなり難しいのではないか。日本にとっては、為替問題は景気・経済にとって最重要ポイントの一つである。最近の相場動向を見ていると、市場も気迷い気味で、日米首脳会談を前に、為替相場はもうしばらく不安定な動きになりそうだ。

しかし、このような状況でも、日米の株式市場は堅調さを維持している。懸念は尽きないが、いまは目先のトランプ大統領の発言に振り回されるのではなく、粛々と自身の投資を続けるのが賢明だろう。筆者が勧めるのは、急落した時に買えるように、とにかく現金だけは用意しておくことだ。その間は、少しずつ急落にも耐えられる程度に資産を積み上げるだけでよい。というのも、市場に入っていないと、感覚がわからなくなるため、こうした作業が必要不可欠だからだ。

もしこの過程で「含み損」が発生したとしても、それは必要コストだと割り切ってほしい。米国企業は優れた企業が多く、長期的に米国株は上昇基調を維持すると筆者は考えている。これが正しいことが前提となるが、運用の軸はできれば米国株におきながら、前述のようなスタンスで市場に臨むのが賢明であり、効率的ではないだろうか。

繰り返しになるが、トランプ大統領の言動にいちいち振り回される必要はない。むしろ、その言動を少しは楽しみながら、運用は粛々と行う余裕も欲しいところだ。もっとも、企業経営者や政治家、金融市場関係者や評論家は、そのような呑気なことは言っていられないだろう。かくいう筆者も同じ立場だが、昨年のブレグジット(英国のEU離脱決定)や米大統領選のこともあり、今回の「トランプ騒動」はきわめて冷静に見ている。そうすれば、見えないものも見えてくるように感じている。
 

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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