東大卒のエリートが「専業主夫」を選んだ理由 妻を支えるため会社を辞めた男に後悔はない
「ママ友とのお付き合いはうまくやれてるのか?」という点が気になる読者もいるだろう。泰三さんが育休を取った10年ほど前は、まだイクメンという言葉すらなかった。そのため、昼間から子供を抱えて歩いていると、けげんそうな目で見られることが多かった。公園に行っても、いるのは女親ばかり。そこには東大受験以上に高くて分厚い壁を感じたという。
「本当にママの世界って勝手に思い込んで、入りにくい雰囲気を感じてしまって、逃げるように帰ってきたのを覚えていますね」
それが今では、ママ友とランチ会をするまでになった。東大卒夫は、意を決し自分からママ友の世界に飛び込んでいったのだ。育児の悩みを共有することで、子供のいい病院情報や献立の相談まで、気軽にできるようになったという。男女の壁も乗り越えていた。
東大の同級生が「うらやましく」も引け目はない
「東大の同級生に対して引け目を感じていないのか?」。泰三さんにそんな思いを抱く読者もいるだろう。
取材班は泰三さんが東大航空宇宙工学科の同級生たちと会う日に、同行した。やはり日本最高峰の大学を出たとなれば、同級生たちもビジネスの世界で活躍している人たちが多い。某電機メーカーで人工衛星の開発をする人がいれば、人工衛星を作るベンチャー企業の役員、さらには国の宇宙開発機関勤務員など、宇宙関係の第一線で働く。
会話は当然、「宇宙」を語り合うというスケールの大きな内容。泰三さんはそれを「うらやましい」と言いながらも、はっきりとこう話してくれた。
「でも、(専業主夫になって)会社員時代ではわからなかったいろんなことが知れて、いま充実していて楽しいし、幸せな生活を送らせてもらっているなと思います。今の妻じゃなかったらこんな経験はできなかったと思いますし、やっぱりよかったなと思いますね」
そんな東大卒子育てパパは今、イクメンのお手本になるべく講演会などでの活動も行い、著書も出版。そんな夫に妻の香苗さんも「感謝しかないですね。女性が社会進出するためには、ものすごく貴重な存在なんじゃないかと思います」と話す。
凝り固まった常識にとらわれず、夫婦にとって最良の選択をしていったらこうなった。ただ、それだけのこと。堀込夫婦は新しい夫婦のスタイルを教えてくれた。
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