中国人観光客を引き寄せる豪州流おもてなし 日本はこの国に勝てる観光の魅力を出せるか

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夜。新年のカウントダウンが迫る中、シドニーの観光名所オペラハウスを臨む港沿いでは、盛大な中国の太鼓や笛の生演奏とともに、獅子舞が始まった。男性はスーツ、女性はチャイナドレスで着飾り、まるでカクテルパーティかのような華やかな熱気が漂う。

実は、シドニーは市を挙げて民間とタッグを組み、ドラゴンレースや中国伝統舞踊など、春節にちなんだ80ものイベントを行うといい、いまや年間を通して最も大きなイベントの1つとなりつつあるという。中国人観光客だけでなく、豪州在住の中国人、そして地元オーストラリア人など約600万人の来場者を見込んでおり、その経済効果は絶大だそうだ。

シドニー市長は「これは中国以外で開催される春節では、世界最大規模だ」と胸を張る。多文化都市としてのシドニーが、ワールドクラスの観光やインフラなどを完備していることを象徴するイベントと位置づけており、春節イベントの成功をいかに重要視しているかが垣間見える。

そして、カウントダウンのとき―。盛大な花火が大きな音を上げて打ち上がると、白い姿が印象的なオペラハウスが真っ赤にライトアップされた。

真っ赤にライトアップされたオペラハウスとハーバーブリッジ(撮影:筆者)

さらに、日中は”空中カラオケ大会”でにぎわっていたハーバーブリッジなど、シドニーのアイコンも一斉に赤くライトアップされ、街全体が中国の春節を祝って真っ赤に染まった。顔を紅潮させながらセルフィーで記念撮影をする中国人観光客たちの表情は、幸せいっぱいだ。上海から来たという女性グループは、「オーストラリアは最高よ! 日本にも行ったことがあるし大好きな国だけれど、この国のホスピタリティはすばらしいわ。だって、まるで中国にいるようだもの!」と、感動した面持ちで語ってくれた。

中国人を心から歓迎して、あたかも中国にいるかのような居心地のよさを提供する、オーストラリアの振り切った盛大なおもてなしは、中国人の心に深く響いていた。

2017年は「オーストラリア中国観光年」

中国とオーストラリア政府は合同で、2017年を「オーストラリア中国観光年」と宣言。両国関係にとって観光は最重要資源の1つだという認識を共有し、その幕開けとして来月5日の春節期間中、オープニングセレモニーをシドニーのオペラハウスで執り行うという。

おカネを落としてもらいたいという下心だけではなく、国や人を好きになってもらい、本当に喜んでもらうためにはどうすればいいか。まるで、その瞬間だけホンモノの中国が舞い降りたかのような規格外の”おもてなし”を繰り出すオーストラリア。異なる文化の外国人を迎えるときに、モノだけではない、心に響く考え抜かれたアイデアや創意工夫が今、日本から遠く離れたオーストラリアで中国人観光客の心をがっちりとつかんでいる。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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