「GODIVA」のロゴ、「裸で乗馬する女性」の意味 バレンタインはあなたの女神を崇めましょう
ゴディバは美しかったのです。絶世の美人を傾国とたたえるように、美しさは武器となり、武器は力を発揮します。領民を守るために自らのありったけをささげたいとの思いは、裸になる羞恥心を乗り越えるに値する崇高さがあります。夫から言われたときに「その程度なら」と決意したのは当然とも思えます。
でも、わたくしは、美人の本心はそんな善意の自己犠牲だけではないと思うのです。――美人とは、美しさを多くの人々に誇示したいという本能をもつ生き物です。あるいは、伯爵だって自分の“所有物”である美しい妻を、その神々しい裸体を、見せびらかしたいという、倒錯的な思いがなかったとは言わせません。
そして、領民たちは騎乗し疾走するゴディバを見なかったのでしょうか。それで彼女に対する敬意を表したことになるのでしょうか。彼女の思いを遂げさせ、その勇気と美しさをたたえるためにこそ――美しいものを見たいと思う当然の気持ちからも――見る、見させていただいたに決まっているのです。
伯爵は政治的に失脚します。夫として、かつ領主としての資格はないとの指弾を受けて……。領民をいつくしむ夫人の意見を容れるしかありません。実質的権力が伯爵夫人の手に移ったといってもいいでしょう。結果として、善政を敷いた伯爵様の(事実と異なる)美談が成立したのです。
裸体のレディ・ゴディバが白馬に跨っている姿を想像すると、なんともセンシュアルです。彼女は「国を傾ける」どころか、国が壊れることを防ぎ、立て直したのです。美人の代名詞は傾国よりも“治世”がふさわしいように思います。
GOD(男性神)+DIVA(女神)
さらに、いま一つ。GODIVAを分解すればGOD+DIVA。GODは神ですが男神のこと、DIVAはラテン語で「神々しい女性、女神」あるいは「歌姫」のことです。ゴディバが本名かどうかはともかく、彼女は女神にして男性神でもあったことを意味します。つまり、最も美しく神々しい女性であったとともに、領主そのものだったことになりませんか?
国名にlaという女性名詞の定冠詞がつくフランス。フランスの国そのものを表す人名は“マリアンヌ”です。彼女は共和制と自由を表象し、母国を守りぬく強さと気品あふれる自由の女神です。ドラクロワ描く『民衆を導く自由の女神』は皆さんご存じでしょうし、NYの港で1876年以来多くの移民を迎えてきたStatue of Libertyはフランスが建国100年のアメリカにプレゼントしたマリアンヌです。
男性読者の皆さん、今年のバレンタインは世界標準にのっとって、あなたの愛する女神に“赤いバラの花”を、おフランス風に捧げるというのはいかがでしょう?
「この花、君ほど美しくないけどね。でも、まるで君のようなんだ」と告げて、しっかり棘(とげ)のあるものを……。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら