JR北海道が直面する「老朽施設の修繕費」問題 経営改善へ「鉄道ユニバーサル利用料」を

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ローカル輸送の主力となっているキハ40形ディーゼルカー。安全投資には老朽化した車両の取り替えや、そのための量産先行車製造費なども含まれる(撮影:尾形文繁)

2015年3月20日にJR北海道が発表した「安全投資と修繕に関する5年間の計画について」(以下「5年間の計画」)では、5年間で安全投資に1,200億円、修繕に1,400億円が必要であると記載された。

また、『北海道新聞』は今年1月22日に、JR北海道が「維持困難線区」13線区のうち、バス転換の意向を示すなどした区間を除く8線区について、橋や車両などの大規模修繕・更新費用が2017年度からの20年間で計435億円に上るとの試算をまとめたこと、そしてこの修繕費についても沿線自治体などに負担を求める方向であることを報道した。

西野氏は「今般、JR北海道で老朽構造物の維持更新問題が早期に明らかになったが、今後全国各地で同様の問題に直面することになる。北海道だけの問題ではない」と警鐘を鳴らす。

多額の修繕費、会計上の処理はどうなる?

JR北海道に限らず、全国の鉄道事業者では今後、将来の修繕費によって決算が影響を受ける可能性があるが、将来の修繕費発生が見込まれる場合、企業会計上どのように処理するのだろうか。

「企業会計原則注解 注18」は、「①将来の特定の費用又は損失であって、②その発生が当期以前の事象に起因し、③発生の可能性が高く、かつ、④その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰り入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部(中略)に記載するものとする。(中略)修繕引当金、特別修繕引当金(中略)等がこれに該当する」と規定する(番号は筆者)。

修繕見込額が、①~④の4つの要件を満たす場合、修繕が1年未満に実施されると見込まれるときは「修繕引当金」として貸借対照表の流動負債に計上するとともに、「修繕引当金繰入額」として損益計算書の販売費及び一般管理費(販管費)に計上する。数年に1度修繕が必要な固定資産の場合、修繕見込額を「特別修繕引当金」として固定負債に計上するとともに、「特別修繕引当金繰入額」として販管費に計上する。

今後5年間の修繕見込額1,400億円は、将来の修繕に必要な費用である点で①の要件を満たし、経年老朽という点で②に該当し、鉄道を維持する場合に将来確実に修繕が必要となる点で③を充足し、かつ1,400億円という金額を提示している点で④にも当てはまることから、1年超の修繕に対応する「特別修繕引当金」への計上が必要な4つの要件を充足していると考えられる。

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