JR北海道が直面する「老朽施設の修繕費」問題 経営改善へ「鉄道ユニバーサル利用料」を

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適切な会計報告が重要であるとの問題意識を踏まえつつ、JR北海道の経営改善に向けて、ステークホルダーと費用分担などについて議論する必要がある。JR北海道が考えている経営改善への主な方策は、「維持困難線区」のうち輸送密度200人以上2,000人未満の線区の維持に向けた上下分離などに関する自治体との合意形成、札幌都市圏の鉄道黒字化および関連事業の強化、そして北海道新幹線および在来線特急の利用促進の3点に集約することができる。

札幌都市圏の鉄道黒字化および関連事業の強化、そして北海道新幹線および在来線特急の利用促進はJR北海道の自助努力で進められるものであるから、異論は出ないだろう。しかし、上下分離については地方自治体の負担を伴うため、協議は難航が予想される。

鉄道に「ユニバーサル利用料」を

そこで筆者は、鉄道の「ユニバーサル利用料」を原資にした上下分離、あるいはJRグループ持株会社設立とそれに伴うJR北海道の子会社化を提案したい。『鉄道輸送統計月報』平成28年9月分によると、2015年度の我が国の鉄道利用者は年間約242.90億人である。そこで例えば、1人1乗車当たり3円を「ユニバーサル利用料」として全国の鉄道運賃に上乗せする形で徴収することができれば、約728.7億円の原資を生み出せることになる。

運賃値上げへの反発も予想されるが、類似する先例はすでにある。「特定都市鉄道整備積立金」である。この「積立金」は、鉄道運賃に上乗せする形で利用者から「前払い」を受け、都市鉄道の新線建設工事や複々線化などの工事完成後は運賃値下げなどを通じて積立金相当額を還元する。一方私案の「ユニバーサル利用料」は、経営難に陥っているJR北海道のみならず、JR四国および全国各地の地域鉄道の鉄道施設保有などの支援に活用することで鉄道ネットワークが維持され、結果として、鉄道利用者にメリットが還元されるとの考え方に立つ。

一方、コスト負担のあり方だけでなく、北海道民へJR北海道の利用を働き掛けることも重要である。

平成27年の国勢調査によると、北海道の人口は5,381,733人であるが、道民全員がJR北海道線の最低運賃170円区間を1人当たり月4回(2往復)利用するだけで、同社は約439億円の収入を手にすることができる。これは、2015年度の同社の営業損失447億円にほぼ相当する金額である。北海道庁はまず、JR北海道の乗車運動と回数券購入運動に率先して取り組んでみてはどうだろうか。

JR北海道の再生は、時間との闘いとなっている。あらゆる可能性を排除せず、JR北海道問題の解決に向けてステークホルダーの英知を結集させるための幅広い議論を強く望みたい。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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