JR北海道が直面する「老朽施設の修繕費」問題 経営改善へ「鉄道ユニバーサル利用料」を

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JR北海道の島田修社長が、夕張支線の鉄道事業廃止を正式表明したのは2016年8月17日。それから3か月が経った11月18日、同社は輸送密度が2,000人未満の13線区1,237.2キロメートルを「当社単独では維持することが困難な線区」(以下、「維持困難線区」)として公表した。

西野副社長は、このうち輸送密度200人以上2,000人未満の線区については「廃止になるというのは全くの誤解。目指すのは(線区の)存続だ」と強調する。この線区を維持する仕組みとして同社は、設備のスリム化と利用の少ない駅や列車の見直しによる経費節減、運賃値上げ、利用促進策、および上下分離を挙げている。

一方、輸送密度200人未満の3線区(札沼線北海道医療大学駅-新十津川駅間47.6キロメートル、根室線富良野駅-新得駅間81.7キロメートル、および留萌本線深川駅-留萌駅間50.1キロメートル)については、1列車あたりの平均乗車人員が10人前後と極めて少なく、線区の営業係数が1,000を大きく超えているなどとして、バス等への転換が適当と結論付けた。

同社はこれら3線区の廃止理由として、運営赤字とは別に老朽土木構造物の維持更新費用として今後20年間で58億円程度(札沼線6億円、根室線22億円、留萌本線30億円)が必要になることを挙げている。また、12月21日にはこれら3線区とは別に、高波などの被害により2015年1月以来不通が続く日高本線鵡川駅-様似駅間116.0キロメートルについて、鉄道を持続的に維持する仕組みが合意に至らなかったことを理由に廃止を表明した。

このままでは資金が足りなくなる

JR北海道は「維持困難線区」の存続に向けた合意形成を図り、損益改善を目指す構えである。合意形成を急ぐ背景には、同社の厳しい決算事情がある。

西野氏は「JR北海道発足後の1988年度は、経営安定基金運用益498億円をもって営業損失533億円を埋め合わせていた。しかしその後の金利低下で当初想定していた7.3%の利回りを確保することができなくなり、2009年度には1988年比で運用益が256億円も少ない242億円にまで落ち込んでしまった。収支均衡を図るために、この時点で(『維持困難線区』の運営方法について)議論をしなければならかったのに、苦情や批判を恐れて安全投資や修繕費を削って対処した」と総括した上で、「しかし、削った悪影響が後で出てきて、事故続発の事態を招いた。それでもう一度、安全投資や修繕に投じる資金の増額を決めたが、このままでは資金が足りなくなるため、『維持困難線区』について、丁寧なご説明と粘り強い協議による合意形成が必要という結論に至った」と説明する。

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