百貨店は「ユニクロ」「ニトリ」入居で甦るのか 苦戦する百貨店の構造改革はどこへ向かう?

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まずは、①自店の既存顧客に向けたマーケティングをやり直して、今まで以上に店舗内で買い回ってもらえるように促す、②お店の商圏内における百貨店顧客層の掘り起こしをする、その次に、③平均年齢が高い既存顧客の、子ども、あるいは孫までをターゲットとしたモノ・コトを開発し、それを適切にプロモーションする、などをしっかり行う必要があります。

これら3つの策を検討し、それでもビジネスにならないと判断した場合に初めて、既存の百貨店顧客と異なる層をターゲットとしたテナントリーシング形式に挑戦することになります。都心店ならばファッションビル、地方・郊外型店ならばショッピングセンターの顧客層にアプローチしていくべきでしょう。

ただ、ここで間違えてはいけないポイントがあります。テナントの顧客と、従来の百貨店顧客では、層が異なります。1つの店名を掲げたハコの中に、客層の違うテナントを導入するのは問題があるため、「2館名方式」を取る必要があります。

「東京パルコ」を作るべき理由

テナント部分を導入している大丸東京店では、若者に人気のあるブランドが複数入居している。(撮影:尾形文繁)

たとえば、現在大丸東京店の中には、東急ハンズや「ローズバッド」といった若者に人気のあるテナントが入っています。ただ、百貨店になじみのない若者たちの多くが、「大丸」という看板のお店の中に、そのようなテナントが入っていることを知らないのではないでしょうか。大丸百貨店を展開するJ.フロント リテイリングの傘下には、若者向けのファッションビル、パルコがあるのですから、こうしたテナント部分は「東京パルコ」と名前を変えて運営した方が、新しい顧客の導入はスムーズにいくでしょう。そういう意味では、2017年の秋に上野松坂屋の南館をパルコとしてオープンするのは、妥当な選択と言えるでしょう。

売り上げはお客様の評価バロメーターであり、営業利益は経営者への評価バロメーターです。百貨店業界は、一般的に収益性が低い小売業の中でもとくに低く、百貨店業界首位の三越伊勢丹ホールディングスでは、主力の百貨店事業の売上高の規模が1兆1873億円あるのに対し、営業利益は215億円。営業利益率にして1.8%に満たない状況です(すべて2016年3月期)。

テナントリーシングをすれば安心なのではありません。顧客層別にアプローチをしっかり分けていくことで、高収益体質を目指してほしいものです。

生地 雅之 オチマーケティングオフィス代表
おち まさゆき / Masayuki Ochi

1952年生まれ。龍谷大学法学部卒業。総合アパレル企業の商品企画生産、ブランド開発、マーケティングなどを担当。取締役営業責任者を経て、2003年9月にオチマーケティングオフィス設立。小売り・アパレル等の経営コンサルティングを経営戦略から実施し、企画、営業、販売の現場を中心に営業利益の改革・改善を提案している。公式HPはこちら​。

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