次はユーグレナがカラ売りレポートの標的に 「ガス欠寸前の単細胞」扱いも影響は限定的

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そして、足元のユーグレナの売上の大半を占める収益柱のヘルスケア(健康食品)事業についても、「神戸製鋼グループ(神鋼環境ソリューション)がミドリムシ由来の食料市場に参入し、市場競争の激化および利益低下が起こると見込まれる」とし、「(バイオジェット燃料への期待を考慮せず)同業の健康食品会社のPER(株価収益率)と同程度のPER30倍を基準とすると、500円~580円が適正株価」としている。なお、レポート発表前日のユーグレナ株の終値は1217円で、PERは146倍だった。

今回のレポートについてウェル・インベストメンツの荒井裕樹リサーチ・ディレクターは、「顧客数は“several”(2~3以上でそれほど多くない数)社。海外を拠点とする大手機関投資家が中心で、昨年の秋頃から販売を開始した」と語る。

1月19日、会見するウェル・インベストメンツ・リサーチの荒井裕樹リサーチ・ディレクター(記者撮影)

ユーグレナの株価を見てみると、昨年6月から10月まで中期で1400円~1500円台のボックス圏で推移。しかし、11月に入って株価は下落し、中旬以降は1300円前後の水準となっていた。このような株価推移について荒井氏は「レポートを入手した顧客による取引が一因となっていた可能性はある」と認める。信用売残高を見ると11月から増加トレンドで推移しており、10月最終週の85万株から1月第2週には246万株まで積み上がっていた。

レポート公表当日(午前8時半に公表)となる19日は、前場に前日比9.7%安となる1098円まで急落。しかし、その後は下げ幅を縮小し1176円(同3.3%安)で取引を終えた。急落後にカラ売りの買い戻しも一定数入ったと推測される。

顧客の利益の裏で

ユーグレナは個人投資家に人気が高く、8万人以上の個人株主がいる。レポートを発端に株価が下落すれば、カラ売りのポジションを持っていたウェル・インベストメンツの顧客が利益を出せる一方、ユーグレナ株を高値で保有していた個人投資家は含み損を抱えることになる。

国産バイオ燃料計画としての期待も高いユーグレナ(2015年12月、風間仁一郎撮影)

しかし、こうした見方に対して荒井氏は、「ユーグレナにはパッシブ型ファンドなども投資しており、必ずしも個人投資家が損したとは言えない。また、個人投資家が投資をする際に、証券会社のセルサイドアナリストのレポートしか情報がないことは良くない。(今回のレポートのような)批判的な意見が存在していれば、よりよい投資判断ができるはず」と語る。

また、「今後も四半期に1回程度のペースでほかの銘柄のレポートを発表していきたい」(荒井氏)との意向を持っているという。

なお、ユーグレナ側はウェル・インベストメンツのレポートに対して、「新たな事実が含まれているわけではなく、当社の開示情報および既知の情報をもとに否定的な意見をまとめたものととらえている。われわれは引き続き、ヘルスケア事業の推進による事業の収益向上と、バイオジェット燃料の実現に向けた取り組みを進めていく」(同社広報)との見解を示している。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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