東海道新幹線が「32両連結」で走行したワケ 全長800メートルの壮観、年1回の大イベント

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深夜の乗客非難誘導訓練(撮影:尾形文繁)

また、この訓練では乗り合わせた社員も避難誘導を行うという内容になっており、たまたま出張中の社員3人が「協力社員」として避難誘導にあたった。従来は鉄道運行にかかわる社員に限定されていたが、今年度から全社員に対象が拡大された。つまり、全社員が乗車中は不測の事態に備えることとなる。

昨年12月3日には、新大阪駅付近にある東海道・山陽新幹線第2指令所からの「列車制御」が行われた。通常は東京都内にある新幹線総合指令所で行うが、年1回、1日だけ大阪の第2指令所で実施する。JR東海は、1995年に起きた阪神淡路大震災を契機に総合指令所のバックアップ設備の必要性を痛感。1999年から第2指令所の運用を開始している。

「いつもどおり」が最も大変

第2指令所で列車制御が行なわれた(記者撮影)

東京で不測の事態が起きた場合、関西の各地や岡山などで勤務している社員が駆け付け、指令員として新幹線の運行管理を行なう。東京で指令員経験のある社員も多い。この日は実際に列車制御を大阪で行うにあたり、JR東海、JR西日本、JR九州から約180人が参加した。

指令所内の機能やレイアウトは東京とほぼ同じだ。正面の大きな総合表示盤は運行の模様が一覧できる。パネル上には東京―新大阪間を行き交う80本以上の列車が表示されている。

「年1回ということで、まごつくことはありませんか?」。報道陣の質問を「年に4~5回訓練を行なっている。今日は本番。まごつくことはありません」と、JR東海新幹線鉄道事業本部の北村清文輸送指令長がきっぱりと否定した。確かに表示盤の向こうでは実際に新幹線が走っている。まごつくわけにはいかない。

「違うことは一切しません。いつもどおりの業務をやるだけ」と、北村指令長。しかし、数分間隔で高速走行する新幹線の運行管理だけに、そもそもいつもどおりの業務自体が簡単ではない。安全に予定通りに運行し、不測の事態が起きた際には影響を最小限にとどめる。そのための準備を怠らない。日本が世界に誇る新幹線を支える、乗客が気づくことのない裏側である。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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