東海道新幹線が「32両連結」で走行したワケ 全長800メートルの壮観、年1回の大イベント

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連結の準備作業(記者撮影)

総合復旧訓練はJR東海の発足以来毎年実施しており、今回で29回目だ。JR東海の各部署の社員をはじめ、関係会社やJR西日本、JR九州の社員など1200人が参加。新幹線の連結訓練も含めて36項目の訓練が行なわれた。

降雨や地震で崩壊した法面に土嚢を積み上げる訓練から、崩壊時に携帯無線機や線路沿いに設置されている沿線電話を使った通信手段取り扱い訓練といったものまで、内容は多岐にわたる。2015年に東海道新幹線の車内で起きた焼身自殺事件を念頭に、スモークマシンで車内に煙を滞留させ、列車火災時の車内状況を体感するとともに、初期消火や避難誘導の手順を確認する訓練も行なわれた。

屋根上の歩行訓練(記者撮影)

新幹線の屋根上での応急処置を想定し、乗務員が新幹線の屋根の上に登って屋根上を歩行するという訓練もあった。N700系に屋根上昇降ハッチがあることを知らない人も少なくないだろう。

昨年4月の熊本地震では、走行中の新幹線がカントと呼ばれる傾斜区間で脱線したため復旧作業は困難を極めた。その教訓から今回の訓練ではカント区間で脱線した軌道モーターカーの復旧訓練も新たに設けられた。このように訓練の内容は毎年見直しが行なわれている。

訓練でできないことは実践できない

「訓練以上のことは実践できないというスタンスで臨みたい」とJR東海の勝治秀行・新幹線鉄道事業本部長は言う。想定外の事態が起きた場合には社員の危機管理能力に頼るしかないが、訓練をしっかりと行なうことで”想定外”をできる限り減らしたいという思いが込められている。

鳥飼基地の列車内で行なわれた火災発生時の消火訓練(撮影:尾形文繁)

JR東海は総合復旧訓練のほかにもさまざまな訓練を適宜行なっている。昨年5月10日には、営業運転が終わった深夜に静岡―掛川間で乗客の避難誘導訓練を行なった。新幹線走行中に運転士が車内で火災が発生していることに気づき、トンネルを避けて列車を緊急停止。車掌が消火活動を行なうとともに、乗客を車外に避難させるという内容だ。

この訓練では、運転士・車掌だけではなく、車内販売員も訓練に参加して車掌と共同で避難作業に当たった。現在、車内販売員の異常時対応は車掌のサポートや乗客への案内といった補助業務にとどまっているが、2018年3月からは役割を拡大して車掌と同レベルの業務を行なうことが決まっている。

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