低価格「ワイモバイル」が本家より売れる理由 「適度な安さと安心」でソフトバンクを上回る

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また、端末面でも、ワイモバイルはアップルの「iPhone 5s」を販売したり、グーグルと一定期間のアップデートが保証された「Android One」を採用したスマホを提供したりと、大半のMVNOがまねできない取り組みを進めている。ソフトバンク自身が運営しているため、IT大手企業との取引が進めやすい点も強みだ。

旧イー・アクセスもグーグルの「ネクサス5」を独占で取り扱うなどしていた。しかし、同社はルーターなどデータ契約のユーザーが多く、スマホ戦略は必ずしもうまくいってはいなかった(撮影:尾形文繁)

もうひとつ、全国に「ワイモバイルショップ」を展開していることも強みといえるだろう。MVNOの大きな弱点の1つとして挙げられるのが、実店舗がない、あるいは少ないため、販売網やサポートが手薄という点だ。実店舗を全国に構えることができる企業は限られているし、出店には場所の確保や教育など、多くの時間やノウハウを要する。

だがワイモバイルは、イー・アクセスとウィルコムの時代にそれぞれの企業が実店舗を展開してきた。ワイモバイルとして独立していた頃もショップの展開を進めていた。そのため、ワイモバイルの店舗は日本全国に多数存在し、販売面はもちろん、いざという時のサポートに関しても店舗で対応してくれるという安心感がある。

現在は好調だが、課題も多い?

大手携帯会社と比べ、端末やサービスの充実度は弱いが、価格は安い。一方でMVNOと比べた場合、価格はやや高いものの、通話定額や実店舗でのサポートといった安心感は大きい。「適度に安く、適度に安心」というサービスをちょうどよいと感じるユーザーが多いからこそ、ワイモバイルは順調にユーザー獲得を続けているのだ。

ただ、足元の市場環境は大きく変化している。いつまで好調を維持できるかわからないというのが正直なところだ。

中でも大きな変化は、KDDI傘下のMVNO、UQモバイルが攻めの姿勢を打ち出していることだ。実店舗の展開などには時間がかかるため、ワイモバイルの優位性がすぐ揺らぐことはないだろうが、UQモバイルはワイモバイルのようなポジションを目指すことを明確にしている。今後の競争激化は免れないだろう。

次ページ今後も絶好調は続く?
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