アップルが年始に「過去最高」を記録した理由 iPhoneやiPadは販売不振だが…

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Amazon Echoは2014年11月に登場した筒状のデバイスだ。全方位にマイクが内蔵されており、部屋の離れた場所からでもユーザーの声を正確に聞き取る。

Wi-Fiに対応してストリーミングサービスから直接音楽を楽しめるスマートスピーカーとしての顔に隠れて搭載されているのは、「Alexa(アレクサ)」と呼ばれる人工知能アシスタントだ。Alexaはアマゾン以外の開発者に対してすでに開放されており、「スキル」(技能)と呼ばれる機能が増えていく。

2016年9月の段階で3000スキルを超えたと報じられてきたが、2017年1月の段階で対応するスキルの数は7000に急増した。これは、1月5~8日にラスベガスで開催された「CES 2017」でLGとともに共同発表に参加した、アマゾンのEcho担当副社長、マイク・ジョージ氏が明かした数字だ。

家電展示会でAlexaが存在感を見せることの意味は、家庭内にあるIoTデバイスが人と会話するインターフェースとしての役割をAmazon Echoが担うということ。アマゾンは、スマートホームの核として機能しようとしているのだ。

このようにスキルが急速に増えていくAmazon Echoの様子を、Forbesは黎明期のiPhoneにたとえている。そして、Alexaを、「声で操作するコンピュータ革命のはじまり」としている。

アップルは「声」時代に地位を築けるか?

アマゾンはコンピューティングの「声」の時代をひそかにスタートさせているが、アップルにはSiriがあり、マイクロソフトにはCortana(コルタナ)があり、グーグルにはGoogleアシスタントがいる。ただ、今回のCESで、Alexaほどの存在感を見せたボイスアシスタントはいない。

アップルによる開発者へのSiri開放は始まったばかりだ。2016年6月の開発者会議で、配車アプリ、写真検索、電話、メッセージ、健康管理、送金の6つのカテゴリーについて、Siriに声で命じることでアプリ内の操作ができる仕組みとなった。

しかし、Alexaのスキルの急進ぶりを見れば、これでは不十分であることがわかる。

2017年の開発者会議では、より広範なアプリでSiriを活用できるようにしなければならないし、iPhoneやiPad、Apple Watch、Macを含むSiri対応製品で、より深くSiriを活用できるようにし、開発者に声でのアプリ操作のメリットを伝えなければならない。

しかし声のコンピューティングが重要かどうかという点も、アップルは開発者とアプリを受け入れるユーザーの手に委ねているのかもしれない。アマゾンのやり方を見ながら、巨大なiPhoneユーザーベースと開発者コミュニティを生かした戦いを仕掛けることに期待している。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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