「猫ひろし」売れない芸人に賭けた妻の真実

リオ五輪出場の裏側には非難と歓喜があった

常識では考えられない突拍子もない提案だったが、猫さんは芸人人生をかけて、オリンピックにチャレンジすることを決めた。

無謀とも言えるこの夫の決断を聞いた恵子さんはやはり驚いたが、その熱意を理解し応援することを決める。ただ、そこには、どうしても拭い去れない不安があった。「日本の芸人が、他国の貴重な出場枠を横入りで奪っていいものか」――。

結婚後の2人には思わぬ展開が待ち受けていた

猫さんの戦いは始まった。カンボジア国籍を取得し、翌年、ロンドンオリンピックまであと6カ月と迫ったギリギリの期限で自己ベストを7分以上も短縮。カンボジアの代表条件をクリアに成功。翌月にはオリンピック出場が決定する。

しかし2人を待っていたのは、壮絶なバッシングだった。「芸人が他国の出場枠を奪った」と、元アスリートや文化人がこぞって非難。マスコミは連日、猫さんを追いかけ、さらには恵子さんの元まで押し掛けた。

恵子さんの危惧が、現実となって襲い掛かる日々。追い詰められ、事態は急展開を迎える。「国籍はあってもその国に一年以上滞在した実績がない」という理由で、猫さんは出場資格を取り消されたのだ。

一方、この発表で、猫ひろしバッシングは終焉を迎え、夫婦には静かな日常が戻りつつあった。

情熱は消えてはいなかった!

迎えた2012年、ロンドンオリンピック。男子マラソンがスタート。この中継を猫さんは東京でじっと見ていた。そして、言った。

「走りたかった」

元々は芸人のノリで挑戦したことだった。しかも4年後は39歳。もうオリンピックのことなど、キレイさっぱり忘れよう…そう思っていたはずだったが、テレビで選手たちの走る姿を見ているうちに、抑えきれない熱い思いがこみ上げてきた。それは、今度こそ、本当のカンボジア代表としてオリンピックを目指すということだった。

そんな夫の決断に、妻は「戸惑いはそんなになかったですね。一生懸命頑張っているのを間近で見てるから芸人活動頑張っていく延長線上のような感じだったので、そんなに不安は無かったのですが…、大丈夫なの?とは思いましたね。国籍変えてカンボジア代表になるとしたら、傷つく人はいないの?って、争わなきゃいけない人がいるんじゃないの?って」

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