なぜエジプトで“味の素"が売れるのか?

エジプトの食卓に革命を起こす男(上)

早くから海外に進出し、現在26の国と地域で事業展開する食品メーカー・味の素。実は、同社の2012年度の海外売上比率は41%に達し、海外利益比率はすでに5割を超えている。さらに2016年度に営業利益1000億円以上を目指しているが、その起爆剤となるのは海外事業だ。ターゲットは世界の食品メーカートップ10入りである。

本格的なグローバル企業に向け、同社はアフリカと中近東諸国をアセアンや南米に次ぐ成長市場と位置づけて、積極的な進出計画を打ち出している。2011年には一気にエジプト、トルコ、コートジボアール、バングラデシュの4カ所に現地法人を設立。また、2013年度中に東アフリカ・ケニアへも進出する見込みだ。国内市場依存型が多い日本の食品産業の中で、同社が推し進めるグローバル経営は目を引く。

重要度を増す新興国市場の開拓。グローバルカンパニーを目指す味の素の挑戦の、まさに最前線がここエジプトなのだ。

人の“口”があるからエジプトで売る

イスラム世界に「アラブの春」が起こったのは2年ほど前のことだ。エジプトでは30年近く続いたムバラク独裁政権が倒れ、一気に民主化が進むと思われた。しかし、モルシ新政権は民衆の不満を受け1年で退陣。再び軍が介入する政変が起こり、いまだ国内情勢は混乱したままだ。そんな状況下のエジプトに、なぜ味の素は進出を決め、ビジネスを続けているのか。宇治社長の答えは明快だ。

「人の“口”があるからです。われわれの商品は人間の数以上には売れない。でもそれは、人口が多いほど売れるということです」

現在、エジプトの人口は約8400万人。人口は右肩上がりで増えており、世界銀行などの予想では2030年までに1億人を突破するとされる。さらに20歳未満が人口の43%、30歳未満が63%(2010年)と若い世代が多く、今後も就労人口や出生率はともに高い水準で維持されるはずだ。人口増加に伴う消費市場の拡大が、今後も大いに期待できる。

日本貿易振興機構(ジェトロ)の推計によると、国民の約7割が年間所得3600ドル以下となっている。後述するように、こうした比較的所得の高くない人々が味の素の最も重要な購買層になる。その層の分厚さもエジプト市場、ひいてはアフリカ市場の魅力になってくるのだ。

オフィスから市内各地へ。毎朝セールスマンたちが出発していく

当然、販売に力を注ぐ場所は、そうした庶民層が多く住む下町エリアだ。そして、そこで毎日のように家庭の主婦たちが買い物にやって来るのがスーク。当地に進出した味の素がまず目指したのは、市内に散らばる大小のスークを中心に、小売店オーナーや消費者たちと直接会い、調味料としての味の素を知ってもらうことだった。

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