SNSに「会社の愚痴」で懲戒処分の法的問題 会社は悪い内容の口コミに敏感だが…

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しかし、シェアしたサイトが投稿者の勤務先の企業を批判しているわけではないですし、このサイトをシェアしたからといって、勤務先の社会的評価が低下するともいえないと思います。

仮に、相談者の投稿が勤務先に対する名誉毀損等にあたるとしても、就業規則等にこれを懲戒処分の対象とする定めがなければ、そもそも懲戒処分をすることはできません。

仮に定めがあるとしても、女性の投稿内容に照らすと、半年間の減給という懲戒処分は行き過ぎであり、懲戒権の濫用にあたると思います(なお、残業禁止の懲戒処分と言うのは、あまり例のないことだと思います)。

そのため、いずれにしても、今回のケースでは懲戒処分は無効であると思われます。

「悪い内容の口コミ、厳しく対応する傾向」

事実でないことを投稿する、事実を誇張する、個人の人格を非難することは法的責任を問われやすいと思います。また、真実であっても、真実性の立証が出来なければ法的責任を負う可能性がありますので、注意が必要です。

加えて、会社にとって、勤務条件や職場の環境、代表者の個性等の評判は、内容によっては死活問題になりかねません。そのため、経験上、会社は自社に対する悪い内容の口コミ等については、当該口コミが法的に名誉毀損等に当たるか否かを問わず、厳しく対応する傾向にあります。

法的責任がないと思っていても、事実上会社との紛争になってしまう可能性があることを念頭に入れて、投稿内容を考えた方がよいと思います。

小沢 一仁(おざわ かずひと)弁護士
2009年弁護士登録。2014年まで、主に倒産処理、企業法務、民事介入暴力を扱う法律事務所で研鑽を積む。現インテグラル法律事務所シニアパートナー。上記分野の他、労働、インターネット、男女問題等、多様な業務を扱う。
事務所名:インテグラル法律事務所

 

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