金正恩が年頭に示した「ソフト路線」の読み方 経済強国はしっかりアピール、核の成果も

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今年の新年の辞では、最後に金党委員長が「人民のための忠実な奉仕者となることを新年最初の朝に厳粛に誓う」と述べるなど、国民に対してソフトな表現、一歩下がったような表現を使っている。これは「人民大衆第一主義」を訴え、党幹部などの権力主義や事なかれ主義といった官僚的な行動の根絶を訴えてきた、金党委員長の姿勢を示したものと思われる。

農業生産の増大も、新年の辞では言及された(写真:記者撮影)

このように、人民に向かってへりくだる一方、「党の規律を厳しくし、労働党幹部などが人民に服務することを率先することで党幹部にプレッシャーをかけ、官僚主義など人民の上に君臨するような振る舞いは根絶することを人民の前で約束する、という姿勢を見せた」と、在日コリアンで北朝鮮経済専門家のパク・チェフン氏は指摘する。

韓国・朴大統領を名指しで批判

以上のような内容は、2016年12月末に平壌で開催された「第1回全党初級党委員長大会」で、「人民の利益と便宜を最優先、絶対視する党の崇高な志と人民的施策が誰にも温かく行き届くように、党活動の主力を入れる」と大会の討論者が述べたと報道されたが、その内容の延長線上にあるものだろう。初級党というのは、国民と直接接し、党の方針や政策を実施する最前線の組織のことだ。金党委員長は外国から、「恐怖主義の政治を行っている」と批判されていることを意識したうえで、あえて官僚主義と不正腐敗からの決別を、国内はもちろん対外的にも示した。

また金委員長は韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領を名指しで批判した。

朴大統領は2016年末のスキャンダルで、2018年2月までの任期を前に辞任することが確実視されているが、批判は朴大統領の先がないことを前提としたものだろう。同時に「北南関係の改善を望む者であれば、その誰とも必ず手をつないで協力していく」と金委員長は述べており、「南北関係の改善において次期政権への期待が込められていること」とパク・チェフン氏は指摘する。今年も金委員長の動向から目が離せない。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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