ここで言いたいのは「地方のブラック農家」やその他の第一次産業関係者などを告発しようということではありません。既存の低付加価値で生産性の低いシステムに人材を集めようとするのでは、未来はありません。過去の常識や伝統を変えていく新たな付加価値の高いビジネス、生産性の高い仕事の仕方こそが、新たな人材を健全なカタチで地方に集め、その地域の課題克服に向けて風穴を開ける一手になります。
地方発の「高付加価値ビジネス」が続々
例えば新潟の三条市に本社を構えているキャンプ用品やアパレル販売のsnowpeakはそうした企業の一つです。株式上場を目指した段階からは積極的にU/Iターン者を広く中途採用し、今や世界で高く評価される高成長企業となっています。
自ら企画から販売までを一貫して行っていくその経営スタイルは、地元三条市の、他の工場群にも影響を与えました。以前は多くの会社が下請け中心でしたが、下請けから転換し自ら最終製品を作り出し、さらに工場見学を街の観光などにも活かす「オープンファクトリー」などの取り組みにまで発展しています。
また、広島の「せとうちホールディングス」の取り組みも未来を感じます。瀬戸内海の観光産業は極めて有望な成長分野です。しかし、地方の国内旅行中心に発展してきた既存旅行・ホテル経営者だけに依存しているだけでは、おカネも時間もある中間層以上の顧客を呼び込むような観光事業を発展させることが困難です。
同HDの子会社である「せとうち SEAPLANES」は、飛行機メーカーを買収し、国内戦後初の水陸両用飛行機の旅客運行を開始し、大きな注目を集めています。
実は、先日私も乗ってきましたが、尾道から飛び立ち、しまなみ海道を上空から眺めて回る観光飛行は、従来の地域観光にはなかったすばらしいサービスです。現在は2機で運用されていますが、2017年度からは12機へと拡充し、しかもしまなみ海道だけではなく、全国各地の内海や湖での運行計画を立てています。さらに大型クルーザーも建造中で、瀬戸内のみならず、全国における「高付加価値型観光ビジネス」の誕生を予感させます。
このように、地方において今後必要なのは、しっかりと新たな市場と見据えて、高付加価値の産業構造へ変化していくような新たな事業家の存在です。過去の非効率な産業を展開する経営者たちを政策的に支えるようなことは、地域のひずみを拡大させ、結果的には衰退を加速させます。
新たな成長分野に地域産業も転換していくことは、短期的には痛みを伴うため、既存の経営者達が反対します。しかし、非効率な事業を続けようとする経営者達の既得権を政治的に守っても、働き手も、地域も、結果として日本社会そのものも守れません。ビジョンある地域の事業家たちの取り組みにこそ、人口減少社会における地方の光があります。
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