燃費不正車「ekスペース」、改良後の評判は? 汚名返上を期す三菱自動車、工場稼働は回復

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今回の商品改良を機にオプション券はなくすものの、ほとんどのグレードで価格を引き下げた。グレードにより差はあるが、旧型車に比べ最大で4万円の引き下げだ。その理由について会社側は、「価格面でも競争力を上げ、顧客に訴求したい」と説明する。しかし、実際は燃費が下がった部分を商品性の引き上げでカバーしようとしても十分にはカバーできず、価格の引き下げに踏み切らざるを得なかったということではないだろうか。

三菱自動車の国内販売は燃費不正で大打撃を受けた。該当する軽自動車は2カ月半にわたり生産と販売を中止。7月に販売を再開し、回復の兆しが見えつつあった矢先に今度はSUV(スポーツ多目的車)の「パジェロ」や「RVR」など登録車8車種でも不正が発覚。8月末から約1カ月間、販売を停止した。

買い支えで販売は一時的に回復

今回の商品改良ではフロントデザインや内装が主な変更点となった(記者撮影)

10月には登録車の販売が再開し、足元では回復の兆しが見られる。11月の国内販売は約8100台と2016年2月以来9ヵ月ぶりに前年を上回った。軽自動車は前年同月を31%も上回った。好調の要因について会社側は「各販売店の地道な販売台数の積み上げに加え、工場の近隣自治体や関係会社などによる買い支えの成果」と分析する。つまり本来の実力でこの販売台数が達成できているわけではないのだ。買い支えが今後も永続的に続く保証はなく、商品で勝負しなければいけないことは同社が一番分かっていることだろう。

今回の「ekスペース」の商品改良がどれだけ勝負になるかは分からないが、同じタイミングで三菱自動車がOEM(相手先ブランド製造)で供給する日産自動車の「デイズルークス」も商品改良を実施。軽自動車を生産する水島製作所(岡山県倉敷市)は11月末から昼夜2交代制に切り替わり、軽の月間生産台数は11月までの約1万台から12月には約2万台に回復する見通しだ。三菱自動車が生産する軽自動車の約4分の3は日産向けのため、日産向けOEMを増やして工場の稼働率を引き上げる点において商品改良はプラスとなる。

今後、同社は2017年度に新型の小型SUVを日本を含む世界各市場に投入する。また主力車種の「ekワゴン」は2017年に商品改良を行い、「ekスペース」とともに2018年にも全面刷新の予定だ。ただ開発の主導権は日産に移り、商品面で三菱自動車の独自性をどこまで出せるかは不透明だ。

三菱自動車の今期の国内販売は前期比37%減の6.4万台にまで落ち込む見込み。度重なる不正で販売車種を絞り込んできたこともあり、前出の販売店の営業担当者は「日産傘下に入ったメリットを活かして、もっと車種を増やして欲しい」と現状打開を懇願する。国内販売の反転はいつになるのか。三菱系販売店にとっては厳しい年越しとなりそうだ。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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