新車「C-HR」がこれまでのトヨタ車と違う理由 空白の小型SUVでライバルを追撃

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走りに関しては、独フォルクスワーゲン「ゴルフ」や米フォード「フォーカス」など運動性能の高い車を参考に、世界中の道路で走行試験を繰り返したという。デザインもこだわった。メリハリを効かせた彫刻的なダイヤモンド形状を採用し、とがった個性的なデザインに仕上げている。

アンダーボディを一段と力強く見せるために、大径タイヤとリフトアップしたボディを採用。全高1550ミリに対して直径690ミリのタイヤが占める割合は44・5%にも達し、他のSUV車以上にタイヤの大きさを目立たせている。一方、アッパーボディは逆にクーペのようなボディにし、リヤのバックウインドウの傾斜角をわずか25度に抑えた大きく寝かせる形状にして、「スピード感とかっこ良さを狙った」(小西チーフエンジニア)。

リアは大きく寝かせる形状でデザイン性を強調した(記者撮影)

際立ったデザインにした背景には、トヨタが行った独自調査がある。小型SUVの購入動機の約4割がスタイル・外観であり、通常の乗用車よりも17ポイント高い。一方、燃費や室内の広さを求める客は相対的に少ない。こうした中、デザインを大胆で刺激的にしないと、他社の車と差別化できないで埋もれてしまう懸念があった。

小型SUVでは”最後発”

というのも、こと小型SUVに関しては、トヨタが大手の中で“最後発”になるからだ。国内ではかつて小型SUVで「RAV-4」が人気を博したが、モデルチェンジのたびに車格が北米需要にあわせる形で大きくなり、日本向けではなくなっている。一方、小型SUVは日産自動車が2010年に「ジューク」を発売して人気に火がつき、2013年に発売したホンダの「ヴェゼル」はSUVの新車販売台数で年間首位を続けるなど、トヨタの出遅れが目立っていた。

トヨタのミッドサイズビークルカンパニーの古場博之主査は「後部座席やキャビンの広さについては割り切っており、通常のSUVに比べて荷室は小さくしている」としたうえで、「たくさん売るというよりも、好きな人は好き、嫌いな人は嫌いという車。本当に気にいってくれる人を重視して造った」と開発コンセプトを説明する。

今回華やかな発表会を開催しない理由も、「トヨタらしくないクルマであることに加え、トヨタとして小型SUVを出すのも(他社より)遅いタイミングだったから」という。

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