OPECと米国、「いたちごっこ」の向かう先 原油価格が翻弄されている
[ロンドン/ニューヨーク 7日 ロイター] - 米シェール業者にとって、過去1週間にわたる原油価格の上昇は、来年以降の生産で収益を確保するためのヘッジを行う絶好の機会になった。
北海ブレントと米WTIの先物価格は期近物が約1年半ぶりの高値を付けたが、期先物はシェール業者のヘッジ売りによって上値が抑え込まれた。つまり今後も期先物が1バレル=60ドル未満にとどまる限り、掘削コストの高い生産者はまったく安心できない状況になりそうで、石油輸出国機構(OPEC)もそれを承知している。
こうした事態について、グレンコアのグラゼンバーグ最高経営責任者(CEO)は今週、OPECと米シェール業者のいたちごっこ的な駆け引きに市場が翻ろうされることへの懸念を示した。
グラゼンバーグ氏は「OPECは『シェール業者(が生産を増やす)場合は、われわれも増産して原油価格を35ドルに押し戻す』と宣言するだろう。シェール業者側が責任ある行動を取り、現実に起きていることを認識するとともに、原油価格が上がり続けるのを許容してほしいと願っている」と語った。
OPECは11月30日の総会で来年1月から半年間、日量約120万バレルを減産することで最終合意した。
その後北海ブレントとWTIの期先物が値崩れし、投資家や生産者が、まさにこの半年間の減産合意を額面通り受け止めたことが分かる。 WTI先物は来年12月限がその1年先のものより高くなり、OPEC総会後に期先物に対する大規模なヘッジ売りが出たことを表している。
ある銀行関係者は「OPECの決定を受け、先週の市場では生産者の動きが非常に活発な状態に戻った」と話した。
米シェール業者ノーザン・オイル・アンド・ガスのブランドン・エリオット副社長はヘッジを増やしたことを明かした上で、主要産地の1つのバッケン鉱区の一部ではWTIが45─55ドルなら掘削の採算が取れると指摘。50ドル台前半程度でヘッジできるようになるとともに、掘削活動は上向くと予想した。
OPECの立場からすると、期先より期近の価格が高い状態は、将来ではなく現在の収入増を保証してくれる。
SEBコモディティズのアナリスト、Bjarne Schieldrop氏は「OPECはこうした流れを知っている。だから手始めに半年だけ減産を続けると約束したのは賢明で、期近物の需給が引き締まった。彼らは期先物の価格を押し上げたいとは考えていない。シェール業者が何の代償も支払わずに新規プロジェクトで確実に大きなもうけを得られる局面を提供したくないのだ」と述べた。
OPECとしては、米シェール業者に積極的に掘削を拡大するインセンティブを与えるのは最も避けたい展開で、実際に2014年11月に原油価格下落を容認したことがまさに掘削コストの高いシェール業者を市場から退出させる要因になった。
ベネズエラのデルピノ石油相は7日、OPECは原油価格を「高過ぎず低過ぎず」の60─70ドル当たりに持っていくことを目指していると発言。ナイジェリアのカチク石油相は、原油価格が来年12月までに60ドルになるのが望ましいと語った。
(Amanda Cooper、Catherine Ngai記者)
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