ゼネコン、五輪施設は「取らぬが勝ち」だった 工期も予算も厳しく赤字案件になるリスク

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理由は2つある。一つは当初から厳しいと言われていた工期。海の森は会場見直しの議論が始まった9月時点ですでに着工していたが、宮城の長沼ボート場での代替案が浮上したこともあり、10日程度の間、工事は中断された。また、バレーボール会場も仮に新設する有明アリーナに決着した場合、工事の開始時期が当初の予定より後ずれすることは確実だ。海の森は大成建設JV(JV=共同企業体)、有明アリーナは竹中工務店JVがそれぞれ受注している。

追加費用がなければ赤字も

もう一つは追加工事の費用が削減されることだ。施設の整備費見直しでは、追加費用として確保されていた予算が削減対象となりやすい。海の森の費用圧縮でも、追加工事への対応費用として見込んでいた予算90億円の大半が削られた。

ゼネコン各社にとって追加工事の費用負担があるかどうかは、工事の利益率に大きく影響する。施工中の仕様変更や材料費の上昇などはままあること。その費用を建築主に負担してもらえないと、赤字工事になることが少なくない。

東京・虎ノ門周辺で進む再開発。ゼネコンにとっての売り手市場が続く(撮影:今井康一)

国内の建設市場は首都圏の再開発や道路などインフラの更新需要も重なり、空前の活況を呈している。民間のデベロッパーや企業も、高額を提示しなければゼネコンに工事を引き受けてもらえない状態だ。これまで儲からないといわれてきた民間工事が、今やゼネコンの高収益を支えている。そのような中で、ゼネコン各社は無理をして赤字工事を請け負う状況にはない。

五輪施設の工事を請け負っていないゼネコンの幹部からは「工期が短くなれば突貫工事は免れない。そのうえ追加工事で稼げなければ、赤字になる可能性もある。国家的プロジェクトだからといって受注しないで正解だった」といった声まで出ている。

大型プロジェクトが動くたびに全国各地で自社の旗を立ててきたゼネコンにとって、「五輪で何もしないわけにはいかない」(準大手ゼネコン幹部)という思いがあるのも事実。ゼネコン各社にとって五輪施設整備をどう乗り切るかが一つの課題に浮上しつつある。
 

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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