地下鉄不便地域をカバーする「都バス」の実力 ヒルズもビッグサイトも主要駅から直結

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東京駅で「東16」系統に乗ろうとすると、行列ができていた。立客も多く満員となってバスは発車。特に催し物があるわけでもないのになぜこれほど混雑するのか、その答えはすぐわかった。タワーマンションの多いエリアに入ると降車が一気に増えるのだ。「東16」系統は東京メトロ有楽町線の月島駅、豊洲駅を経由するが、東京駅から有楽町線を利用するには乗り換えが必要になる。湾岸地域に建ち並ぶタワーマンションのエリアで暮らしている人々にとっては、都バスが日常の便利な足となっているのだ。

バスは45分ほどかけて終点の東京ビッグサイトに到着した。時間的には京葉線・りんかい線経由が速いが、ゆりかもめ利用ならほぼ互角だ。夏と冬に東京ビッグサイトで開催される同人誌即売会「コミックマーケット」の期間には、東京駅-ビッグサイト直行の臨時便が多数運転されており、東京駅からダイレクトに現地に向かいたいという需要が多いことがうかがえる。

ほかにも興味深い系統が都バスにはある。「学」という記号のついた、「学バス」と呼ばれる系統だ。通学用のバスとして運賃が通常の210円(ICカード206円)より安い180円(ICカード175円)となっている系統で、現在は6系統が存在する。このうち「学01」は上野駅から東大構内を結ぶ系統である。この区間をダイレクトに結ぶ鉄道はない。それゆえ、バスが重宝される。

「学01」は、平日はだいたい1時間に3本の運転。上野駅から乗ろうとすると、やはり行列ができていた。学校行きのバスなのに老人が多いのが不思議だったが、東大病院前では多数の乗客が下車した。実態は通院バスなのだ。

どうやって乗るのがお得?

そんな都バスも、毎日利用するとなるとそのつど料金を払うのではなく、やはり定期券がほしい。都バスの定期券は、多摩地域以外の均一区間なら全線乗り放題である。1カ月定期と3カ月定期の他に、1カ月+4日の「定額定期券」というものもある。1カ月は通勤で9230円、定額定期券は1万円だ。

だが、PASMO・Suicaで都バスに乗る場合は「バス利用特典サービス(バス特)」という制度がある。利用回数に応じてポイントが貯まり、一定のポイントに達すると運賃支払いに使える「チケット」が自動的に付与され、割引になるというシステムだ。

たとえば23区内で都バスを30回利用した場合、本来なら206円×30回で6180円となるところ、実際には5330円で済む。つまり、1カ月間に乗る回数によっては定期券よりもカードのほうがお得ということになる。バス特適用で1カ月分の定期券代より安く済むのは、乗車52回まで。これよりも乗る回数が多ければ、定期券を購入したほうがお得だ。

また、都バスの複数路線を乗り継ぐ場合、PASMOかSuicaを利用すると、大人100円の乗継割引もある。2回目に乗った路線の運賃から、100円を割り引くというものだ。1回目の運賃精算から90分以内に乗りついだ場合に限り適用される。

鉄道がいまいち不便だなあ、という場所に行く際は、都バスの利用を検討してみよう。都バスの路線網は、たいへん細かい。地下鉄だけではなくバスも利用すれば、都内の移動はもっと効率的になるはずだ。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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