カラオケ「シダックス」、大量閉店の全真相 不採算店を生んだ、不動産契約の失敗

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その後、シダックスはカラオケ事業を本格的に展開していくにあたって、健全で清潔なカラオケルームを標榜(「きれい・おいしい・うれしい」、「3世代で楽しめる場」)し、郊外主要幹線道路沿いに客室数50以上の大型店を次々と出店。「地域の新・公民館」(集いの場)も掲げ、併設する大型ホールを地元住民に貸し出す等、地域密着型の経営を進めることで、業界最大手にのし上がった。

だが、そうした手法は、いつしか通じなくなっていった。顧客は次第に、食事や飲み物の持ち込み可や室料ゼロ円の格安カラオケを重視するようになり、シダックスは厳しい価格競争にさらされることとなった。

同業他社へと転貸借?

決算説明会の場で志太勤一・会長兼社長は「ある意味では(カラオケ)業界の中から撤退していく」と説明した(記者撮影)

ドル箱だった企業、グループでの利用も減る一方で、業界では「一人カラオケ」といったものが台頭。シダックスは給食発祥であることを生かし、「レストランカラオケ」を売りにしてきたが、カラオケをしながら飲食をするようなニーズも減少していった。

赤字のカラオケ店舗をどうするかーー。難事業を任されたのが、経営陣の中で唯一、シダックス創業期から在籍し、グループ7社の社長を歴任、現在はグループ内の不採算会社の立て直し等を担当する、副会長の遠山氏だった。

遠山氏が取ったのは、やや異例ともいえるスキームだった。まずグループ内にシダックストラベラーズコミュニティ(以下STC)という会社を設立し、カラオケ事業の赤字店舗をすべてSTCに譲渡。2016年3月末に取引先など外部の事業会社にSTCが第三者割当増資を実施し、シダックスの出資比率を35%までに圧縮。結果的に不採算店は持ち分会社が保有する形をとっている。

だが、早期決着がベストという判断から、STCで改善が困難な店舗のうち78店舗については、9月末までに同業他社に売却譲渡、転貸借(又貸し)契約をし、自主撤退を完了している。

撤退はまだしも、同業他社に売却譲渡、転貸借する理由は、驚くべきものだ。店舗を建てた土地賃貸契約が「当時の慣行で15~20年間、最長で25年間もの契約期間」(遠山氏)で設定されていたのだ。

しかも、途中解約すれば、違約金の支払い義務があるものばかり。違約金は1件で10億円にも及ぶものがあったという。しかもこの中には内装や備品などの撤去費用が含まれていない。

そこで遠山氏は、冒頭のように同業他社の幹部を集め、譲渡や転貸借のスキームをまとめた。その際の条件は、「パート、アルバイトまで含めて雇用だけは絶対守ってもらう」(遠山氏)ことだった。

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