カラオケ「シダックス」、大量閉店の全真相 不採算店を生んだ、不動産契約の失敗
シダックスへの残留を希望するスタッフは、グループ各社への配転等でも対応して全員を引き取ったと説明する。だが転貸借の場合、シダックスは契約通り、大家に家賃を払い続け、新たな運営元から家賃を受け取るため、差額は完全な持ち出しとなる。
シダックスから店舗を譲り受けた、業務用カラオケ機器の販売・賃貸の最大手、第一興商の小林良悦・経営企画部副部長は「シダックスは当社の機器を入れている顧客でもあり協力関係にある。当社のビッグエコーを含めた、いくつかの事業者(カラオケバンバンのシン・コーポレーション等)で店舗を引き受け、継続して営業している」という。
カラオケ業界は衰退していない
シダックスから別の運営会社に変わった場合、第一興商にとってはカラオケ機器入れ替えのビジネスチャンスになる。
「相当な出荷増、稼働台数増につながっているのは事実。シダックスの大量閉店は、カラオケ業界の衰退の象徴のように受け止める人もいるが、逆に業界は活性化している」(小林氏)と意気軒高だ。
一方で、「まねきねこ」ブランドのカラオケチェーンを展開し、飲食物等の持ち込み自由や一人カラオケといった低価格を武器に店舗数を増やしているコシダカホールディングスの朝倉一博常務は危機感を募らせる。
第一興商、シン・コーポレーション等、同業他社が棚ぼた式に店舗数を増やし同一エリアに集中出店することで、業績を伸ばすドミナント戦略をとり、より激しい「陣取り合戦」が勃発する可能性があるからだ。「(業界内での)優勝劣敗がよりはっきりしだした。負けないように社内的では(利益よりも)出店の方にバイアスがかかってきている」(朝倉氏)。
カラオケ業界の衰退の象徴のように語られるシダックスの大量閉店だが、全国カラオケ事業者協会の片岡史朗事務局長は「渋谷の旗艦店(シダックス・ビレッジクラブ)閉鎖のインパクトは大きいが、(業界自体への影響について)さほど大きなものは感じない」と答える。
カラオケの参加者人口は、2011年の東日本大震災での落ち込みはあったものの、2015年まで毎年10万人単位で、カラオケルーム数も数百~1000以上のピッチで微増が続いているからだ。個人消費支出も冴えないことから、人々は「安近短」レジャーの王道であるカラオケへとじわり回帰しているようだ。全国にはまだカラオケの空白地域があり、大手カラオケチェーンのフランチャイズとして、地元の飲食店や旅館業者が参入して、成功している事例も多いという。
シダックスは今後、カラオケ店舗の空いたスペースを、カルチャースクールやフィットネス、エステ施設に改装。「カラオケをやめるわけではなく、カラオケもある」(志太会長兼社長)という複合店舗化で展開していくという
一方で、好調の自治体からの管理受託(大新東、シダックス大新東ヒューマンサービスのトータルアウトソーシングサービス)を、より太く育てていく方針だ。
果たしてカラオケ事業は存続できるのか、それとも不採算店と同じように業態そのものを売り払ってしまうのか。シダックスは重大な局面に差し掛かっている。
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