「5分間1400万円」の宇宙旅行は実現するのか HISとANAがそろって出資を決めた理由

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「ゆくゆくは宇宙ホテルを手掛けたい」と話すのは、HISの澤田秀雄会長。将来的に、高度100キロ地点でロケットを空中発射させ、衛星軌道に投入できるようになれば、本当の意味での「宇宙旅行」が可能になる。

「気持ちだけでおカネは出してくれない」

宇宙旅行実現の夢を熱く語った緒川社長。会見には報道陣が殺到した(撮影:大澤 誠)

澤田会長と緒川社長の出会いは7年ほど前。場所はベンチャーのコンテストだった。「夢があっていいじゃないか」。そう感じた澤田会長は少額の資金支援をしていた。だが「日本から新しいものを生むには、資金をつけて速度を上げる必要がある」として、今回の出資を決めたという。

ANAHDの片野坂真哉社長は、新入社員の頃に社内報にこう書いていた。「将来、ANAは宇宙を飛ぶ」。2015年の社長就任以降も、社内で頻繁に宇宙への夢を語っていたという。そんな話を聞きつけた緒川社長が今年7月、ANAの門をたたいた。片野坂社長は9月にPDエアロスペースの工場を見学。「”下町ロケット”のような世界だった。ぜひ応援したいとの思いを強くした」。

「応援の気持ちをもらうことは多いが、おカネは出さない人ばかり。ベンチャーのために大きなおカネを動かすのは難しい」と緒川社長は嘆く。今回の2社による出資額も限られている。だが大手企業が参加したことで流れが変わることを期待する。「やりたいなら来い!」と大胆に言ってみせた緒川社長の指に止まってくれる企業は、はたしてどこまで増えるか。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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