「5分間1400万円」の宇宙旅行は実現するのか HISとANAがそろって出資を決めた理由
スペースシャトルを始めこれまでの宇宙機は、大気への下降時には動力を使い切っており、引力に任せながら滑空して着陸しなければならなかった。そのため制御しづらく、場合によっては不時着する必要があった。
だがPDエアロスペースのエンジンにはジェットエンジンの機能もあるため、一般的な空港から離着陸も可能だという。「日本の主要空港のように2500メートル級の滑走路があればできる」(緒川社長)。
2028年には年間1000人が宇宙へ
2020年までにプロトタイプを完成させ、有人での高度100キロ到達を目指す。その後2023年に量産を始め、当初は2機体制で商業運航を始める。まずは年間50人に乗ってもらうことを目指す。その5年後、2028年には5機体制に移行し、年間1000人の輸送を計画する。宇宙機の開発と商業運航開始には、合計170億円ほどの費用を見込む。
気になるのはその旅行代金だ。「宇宙旅行事業で先行する企業が設定する価格帯の7割くらいにしたい」と緒川社長は言う。代表的なのは英国ヴァージン・グループの創業者、リチャード・ブランソン氏が立ち上げたヴァージン・ギャラクティック社だ。総飛行時間や無重力時間はPDエアロスペースと大差ないプランで、価格は25万ドル(約2750万円)だ。
ヴァージンは「スペースポートアメリカ」という宇宙機専用の空港を米国ニューメキシコ州の砂漠地帯に設ける。PDエアロスペースとは違い、滑空で着陸しなければならないため、通常の空港よりも広く場所を取らなければならないからだ。面積は成田空港の約7倍だ。
実際の飛行時期は未定だが、ヴァージンではすでに申し込みを開始しており、これまでに700人以上が支払い済み。3分の1は米国人で、日本からは19人が参加する予定だ。全体の3分の2が企業経営者だというから、やはり高額所得者のぜいたくといったところだろう。
PDエアロスペースは、ヴァージンの7割より安い1400万円で実現する予定という。さらに緒川社長は「将来的には欧州に旅行するくらいの価格にしたい」と意気込む。そのためには年間1000人規模の輸送が必要なのだという。
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