トヨタが認めた!ダイハツの「小さい車」作り 三井社長、「世界の小型車をわれわれが担う」

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続けて裏話も披露。「7年前にモーターショーでコンセプトカーを出したときは、安くできると思い3ドアで計画していた。だが、それはユーザー目線ではない。やはりドアは5枚にして118万円の価格を決めたが、それでは売れないと考え、すべてのプロジェクトをキャンセルしひっくり返して造り替えた」と明かした。その後、ミライースの技術は海外にも飛び、今では東南アジアでも次々とヒットを出すまでになったという。

生産を担当したのはダイハツの生産子会社であるダイハツ九州。三井社長の古巣だ。業界も注目する最新鋭の工場で、コンセプトは「シンプル、スリム、コンパクト」だ。組み立て工程数を大きく減らし、生産ラインの長さを半分にするなど、生産コストを大幅に引き下げて低価格化を実現した。三井社長は「車種ごとに必要だった専用設備をなくし、ひとつのラインに何車種も流すことができる。汎用ロボットを多く使用し、プログラムを組み替えるだけで対応できる」と話した。

小さい車作りはダイハツが担っていく

低価格の車を造る生産技術への自負は高い。三井社長は「最近トヨタに認められてきた。小さい車を作る点ではダイハツにかなわないと。小さい車については国内も新興国もダイハツが担っていく」と強調。今後は軽から上のコンパクトカーも狙う方針だ。三井社長は「軽からストレッチして1リッターカーを作った方がより良品廉価にできるだろうと思う。大から小ではなく、より小さなものからコンパクトカーを作る。トヨタに認められたのでフィールドを広げていきたい。今後世界で増えていく車の半分は小型車になるとの見方がある。われわれの出番だなと思う」と話した。

実際、最近発売した新型小型車「トール」はダイハツが軽自動車の技術を駆使して企画、開発したコンパクトカーで、トヨタ車全4チャンネルにもOEM供給している。三井社長は「お客様に選んでもらえる選択肢を増やす意味で、軽自動車の技術を使ってトールを作った。軽だけにしがみつくのではなく、車づくりの源泉である軽を守りながら、その技術でどこまで1リッターや1.3リッターにストレッチしていけるかだ」という。

従来の常識を覆した軽スポーツカーの「コペン」(写真:記者撮影)

一方、2年前に発売した軽スポーツカー「コペン」はダイハツの夢であり挑戦だという。「スポーツカーを単に作りたかっただけではなく、これまでの常識、ダイハツを変えたかった。軽くて丈夫なフレームを造って、中身は頑丈に、外側は樹脂で自由に作れる車だ。スマホのカバーのように着せ替えできる」。

また電気自動車や自動運転などの次世代技術について学生からの質問に答えた。電気自動車については、「研究している。お客様が選ばれるものを安く速く提供するのが使命」と応じ、また自動運転については、「ダイハツだけだと時間もカネもかかるので、トヨタと一緒にやっていこうとしている。機能を限定して安く提供するのがいいと思っている」とした。

最後に求められる人材として、「社会がどんどん変化している中で、今興味を持っていること以外にも広い視野や世界に興味を持った方が技術者としての幅も広がる。これしかやりたくないという学生は多いが、それよりも変化に敏感になることが、タフでグローバルな人になると思う」とエールを送り、拍手を浴びた。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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