遠藤憲一「コワモテ」なのに好感度抜群の理由 日本一に上り詰めても謙虚で手を抜かない

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気の利いたコメントができる俳優は他にもいますが、その大半は“自分目線”からの言葉になりがち。一方、遠藤さんは「何を求められているか?」「喜んでもらえるのは何か?」を考えた“周囲目線”の言葉が多いため、スタッフや共演者の士気が上がり、記者もいい記事を書こうとするなど温かいムードになるのです。このような男らしい振る舞いは、ビジネスパーソンにも参考になるでしょう。

また、遠藤さんが見せる全方位への気配りは、リーダーみずから宣伝マンとなる“トップセールス”の意味合いも大きく、視聴者に「あの人がそこまで言うなら見てみよう」という説得力を感じさせています。

これをビジネスパーソンに置き換えると、「役職がどんなに上がっても、最前線にいる営業マンのように自社商品をPRする」ということ。ベテラン俳優の遠藤さんが「自分ではなく作品ありき」の姿勢を貫いているように、経験豊富なビジネスパーソンも「自分ではなく会社(商品)ありき」の姿勢を見せることが、業績アップにつながっていくでしょう。

「明るく笑い飛ばす」安心の自虐話

もう1点、遠藤さんのコメントで取り上げておきたいのが、熱血話と自虐話の緩急。

遠藤さんは、大河ドラマ「真田丸」への出演に際して、「若いときはひとつの目標でしたが、ひとたび出演してみると緊張を感じます」「撮影に入る日は前日から緊張していました。プレッシャーではなく役に入っていくという緊張感です」。

「お義父さんと呼ばせて」の見どころを聞かれて、「ギャグで笑かしたりするんじゃなくて、ストーリーの展開で視聴者がキュンと来たり、思わず吹きだしてしまうようなものをキャスト、スタッフが一丸となって作っていきたい。そのためには、役にちゃんと血が通ってることが大事」と熱っぽく話していました。

ところが、熱血話から一転して自虐話を盛り込んでくるのです。「お義父さんと呼ばせて」では「僕、こんな顔してるのにホームドラマが好きなんですよ(笑)」。「民王」では「(大学生との入れ替わりについて)僕、中身が小学生って言われるんです。だから年上を目指さなければいけませんね(笑)」と話して爆笑を誘いました。さらに、前述した高校中退や下積み時代のことを自虐話として語ることもあります。

遠藤さんはインタビュアーの質問に熱っぽく答えながら、サラッと自虐話を入れるのですが、ポイントは「みずから明るく笑い飛ばしている」こと。自虐話をするとき、「笑わせよう」と思い過ぎて痛々しさを感じさせる人をよく見かけますが、それでは相手を困惑させるだけです。ビジネスパーソンの中にも、業績ダウンや失敗談などを自虐話として話したがる人がいますが、「自ら明るく笑い飛ばす姿を見て、初めて相手も笑える」ということを覚えておきましょう。

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