「貧困と無縁」な母子家庭ゆえの苦悩もある 「キャリア系シングル母」3人の壮絶なる闘い

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まだ赤ちゃんの長男と、これから生まれてくる子どもがいる中で、愛子さんは自ら生計を立てていく必要に迫られました。愛子さんは19歳で母親と死別したため、親を頼ることもできません。

そこで、生活保護を受けることにしました。「市役所に毎日通って交渉し、妊娠7か月のときに満額受け取れるようになりました。ただ、無職のままで出産。これからどうやって子どもを育てていくのか、ものすごく恐くて、この時が人生のどん底だったと思います」(愛子さん)。

就職活動をしようにも、保育園に空きはありません。預かってくれる時間が短い「家庭保育室」を利用しながら、25歳の時に外資系の保険会社の営業職に就くことができました。

しかし、そこからがまた新しい苦労の始まりでした。入社直後、同期は皆遅くまで残って、金融関係の資格試験に向けた勉強や、実際の商談の場面などを想定したロールプレイングをしているのに、愛子さんは子どもたちのお迎えのために16時には退社しなければなりません。翌朝出勤すると、いっしょに勉強していたほかの同期たちの結束は強まり、スキルもアップしていました。

「女性最年少管理職」に就くまでの壮絶な努力

しかし、愛子さんはそこであきらめませんでした。明け方3時に起きてからと、夜子どもを寝かしつけた後の1日2回、試験勉強やロールプレイングを1人黙々と続けました。

「ひとり親だからお金がなかった、という言い訳を子どもにはしたくないという一心でした。目標は、年収400万は稼げるようになること。その時思ったんです。もしこんな環境で1位になったら、私はすごいんじゃないか、と」(同)

その結果、資格試験では同期で唯一の100点満点を取ることができました。営業成績でも関東1位も獲得。さらには、就職して1年2カ月後に女性最年少(当時)で管理職に就くことができました。

ただ、管理職になったがゆえに、新たな壁に直面することに。

まず、子育てでは長時間労働がネックになりました。「管理職として現役でバリバリ仕事している人たちを引っ張る立場なので、自分だけが19時、20時に帰るというわけにはいかず、結局22時ぐらいになってしまうんです」(同)。

しかし、保育園に子どもを預けられるのは20時まで。そこで、ベビーシッターを頼むことにしましたが、かかるコストはばかになりません。保育料も含めると、毎月20万円の出費になります。そこで愛子さんは、会社に働きかけ、会社からシッター費の補助が出る制度を新しく作ってもらいました。

しかし、それはそれで世間からの心無い発言に悩まされました。

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