19世紀半ば以降、蒸気の力を得て発達していった近代社会の原理は、「より早く、より遠くに、より合理的に」でした。そしてそれは、資本経済社会を支配してきた「成長」という概念にほかなりません。
21世紀は「よりゆっくり、より近く、より寛容に」
しかし、「より遠く」は、太平洋をノンストップで飛行するジャンボジェットの引退で、「より速く」は、大西洋をマッハ2で横断したコンコルドの運航停止で、そして「より合理的に」も、最も効率的エネルギー源であった原子力工学における安全神話が、2011年の東日本大震災で自然の力の前にあっけなく崩壊したことで、それぞれ限界を迎えたと言えます。
もはや「物理的・物的空間」にはそれらの成長を実現する場所はありません。
21世紀のシステムは、20世紀の延長線上ではなく、潜在成長率がゼロであるということを前提に構築していくことが必要です。それにのっとれば「よりゆっくり、より近く、より寛容に」が、21世紀の原理であるのです。
これを資本主義の中核を担っていた株式会社に当てはめれば、減益計画で十分だということ、現金配当をやめること、過剰な内部保留金を国庫に戻すことです。
おそらく2020年の東京五輪くらいまでは、「成長がすべての怪我を治す」と考える近代勢力が力を増していくでしょうが、それも向こう100年という長期のタイムスパンで見れば、ほんのさざ波に過ぎません。この22世紀へ向かう大きな潮流こそが、「中世への回帰」であるといえるのではないでしょうか。
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