欧州の「貨物列車」はこんなに進んでいる 衰退が続いた日本とは大きな違いが

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最初にこのバイ・モード仕様に着目したのはボンバルディアで、2011年に同社の機関車シリーズ最新型「TRAXX AC3」に、240キロワットの小型エンジンを搭載した「TRAXX AC3 LM」を発表した。LMとはラスト・マイル(Last Mile)の略で、残りのわずかの区間、すなわち到着後の入れ換え作業などを考慮したものだ。すでに製品化されており、同社は30両ほどを受注している。今回は会場での実車展示は行われなかったが、同社ブースには模型が展示されていた。

実車が展示されていた車両の中では、英国のDirect Rail Services(ダイレクトレールサービス、DRS)がシュタドラー・ヴァレンシア(かつてのドイツ・フォスロ社スペイン工場)に発注した88型電気機関車がバイ・モードだった。同機は交流25キロボルト用で最高時速160キロメートル、最高出力4000キロワットを誇るが、出力708キロワットのディーゼルエンジンも搭載している。

ポーランドNEWAG社の貨物用電気機関車、DRAGON。2016年モデルより、小型ディーゼルエンジンの搭載が可能となった

また、ポーランドのNEWAG(ネヴァグ)が製造する貨物用機関車DRAGONも、今年出品された2016年型モデルでは、520キロワットのディーゼルエンジンを搭載したことが発表されている。これからの時代は、非電化区間も走行可能な電気機関車が標準となっていくだろう。

入れ換え用機関車は低公害車両へ

一方で入れ換え用の機関車は、低公害仕様が今後のスタンダードとなりつつある。入れ換え作業は発進と停止の繰り返しで、長時間のエンジン使用は決して環境に良いとは言えないためだ。

ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州に拠点を置き、100年近い歴史を誇るグマインダー・ロコモーティフェンは、ハイブリッド機関車を出展していた。同社は主に操車場内の入れ換え用小型機関車を製造しているほか、各鉄道向けの特殊車両(ワンオフ製品)や中古車両を買い取り、再販する業務も行っている。同社の入れ換え用ディーゼル機関車はサイズに応じて3車種が用意され、そのうち一番大きいD75BB形機関車にハイブリッド車が設定されているが、今回はその一つ下のクラス、D60C形のハイブリッド仕様が出品された。

一方、オーストリア連邦鉄道は、既存の1063形入れ換え用電気機関車を改造して高性能バッテリーを搭載。架線区間では走行およびバッテリー充電のために架線からの電源を用い、架線のない区間ではバッテリーに蓄電されたエネルギーで走行するゼロ・エミッション機関車(自動車で言うところのいわゆるEV)を出展した。

バッテリーは世界各国の電機メーカーで研究・開発が行なわれてきたが、自動車など大きいものを動かせるだけの性能を発揮するためには、現段階ではかなりサイズが大きくなる。また、継続使用できる時間や出力性能も、実用的にはまだまだ物足りないレベルだ。バッテリー装置の小型・軽量化と性能向上が喫緊の課題であろう。

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