欧州の「貨物列車」はこんなに進んでいる 衰退が続いた日本とは大きな違いが

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その後、汎用型電気機関車としては、オーストリア連邦鉄道向けに開発された最高出力6400kW、最高時速200キロ以上を誇るES64 U2型、通称「タウルス」(シーメンス製)が一つの完成形となっており、オーストリア国内のみならず、周辺各国の国鉄や民間の鉄道会社で幅広く採用された。

ところが、21世紀を迎えた頃から欧州では各国鉄の民営化が進み、列車を運行する会社も旅客部門・貨物部門で分社化されるようになった。機関車もそれぞれの部門で所有する形となることから、オーバースペックで高額な汎用型ではなく、最高速度を高めた旅客用か、牽引力を高めた重量貨物用かを選択できる形が求められるようになった。

シーメンスの最新鋭機関車ヴェクトロン。欧州域内4種類の電化方式に加え、ディーゼルも選択可能だ

こうした事情により、各メーカーともベースとなるプラットフォーム(基礎となる部分)は共通ながら、各鉄道会社の要望に応じた仕様へ組み上げることができる車両を開発するようになった。特に重要なのは動力方式と電源方式だが、各メーカーの機関車とも同じプラットフォームを使って、ディーゼル機関車にも電気機関車にも造り分けられる構造となっている。

欧州には4種類の電化方式(直流1.5キロボルト、3キロボルト/交流15キロボルト17ヘルツ、25キロボルト50ヘルツ)が混在するが、共通プラットフォームによる電気機関車はこれらのうち1種類のみ対応から4種類すべてを搭載した車両まで、ユーザーの使用環境に応じて選択可能となっている。まず車種とグレードを選び、色を決めてオプションを検討する・・・・・・まさに、カーディーラーで新車を検討するのとまったく同じなのだ。

電気がなくても走れる「電気機関車」

最近は、ディーゼルエンジンと電気の2種類の動力を搭載した車両、すなわち「バイ・モード」が注目を集めている。通常は電気機関車として使用され、ディーゼルエンジンは貨物ヤードにある架線のない区間での簡単な貨車の入れ換え作業や、非常時に使用するための小型のものだ。

近年、欧州の鉄道ではオープンアクセスによる民間企業の参入が相次ぎ、終着駅へ到着後の入れ換え作業は別の業者へ頼まなければならない。かといって、自社で入れ換え用の機関車を別に用意するとなるとコスト増加に繋がる。しかしバイ・モード仕様であれば、牽引してきた機関車が入れ換え用の機関車も兼ねることで、こうしたコストを全て削減できることから注目を集め、各メーカーで研究・開発が進められていた。

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