外苑火災事故、法的責任を問われるのは誰か 免責事項だけでは、主催者は逃げ切れない

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「まず民事責任について考えると、今回のイベントが遊園地のように料金を支払って入場していることに着目する。これにより主催者には、入場者が安全に楽しめるようにする義務が生じる。これが果たせなかった今回は、民法415条の債務不履行責任を負うことになる。さらに、火事を起こしたことによる民法709条の不法行為責任も生じるだろう」(同)

「東京デザインウィーク」の展示物に関する安全基準内部資料によると、「展示装飾品は、法令により防炎防火対象物に指定されています」とし、製作者に「装飾資材は、消防法により指定された防炎・防火材を使用する等、日本国における内装制限の諸規則に準じて選定してください」と遵守を促す項目があったようだ。

しかし、東京デザインウィークの主催者は、遵守状況をチェックをしていないことを明かしており、結果的に火災が発生していることから、不法行為責任を負う可能性がある。展示物を作成した学生が予定外の白熱電球を勝手に使っていたという事情があるにしても、責任を逃れられるわけではないだろう。

屋外だったため、消防法の適用外

また、今回の事故は屋外で起きていることも重要な事実だ。

屋内に関しては、大人数が出入りする場所において消防法に基づく防火管理者の選任や消防計画の作成などが義務付けられている。しかし、屋外に関しては、消防法の規制外である。消防庁予防課は、「屋外イベントに関しては、都条例により一定の規模で火気を使用する場合には届出が必要となる」と話す。だが、今回使われたような照明器具では、基本的に「火気」には当たらないという。また、「東京デザインウィーク側からはイベント自体の届出はあったものの、焼失した木製ジャングルジムは届出の対象外であり、消防署によるチェックはなかった」(同)とのことなので、行政機関の監督外だったということになる。

では、学生側の責任はどうなるのか。坂根弁護士によると、原則的には「ジャングルジムの設計や製作を指導的に進めた者」と「白熱電球をジャングルジムに設置した者」「白熱電球の点灯を決定した者」「白熱電球の点灯のスイッチを押した者」のそれぞれの行為が不法行為者になりうるという。さらに、これら全体をチームとして指揮・監督した者に関しては、ジャングルジム製作への関わり具合によっては、民法715条の使用者責任が問題になるとした。

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