欧州経済は、2013年後半に底入れか? アイルランド支援完了へ 欧州の緊縮財政が大転換
EU全体が緊縮緩和へ
一方、経済破綻のきっかけとなった不動産バブル崩壊ではまだ住宅価格や竣工件数の減少は止まっておらず、緊縮財政と相まって内需の低迷が続く。「失業率は14%とまだ高く、国民が苦しんでいるのは間違いない」とエイモン・ギルモア副首相は言う。ただ今年後半からはいよいよ内需も底を打ち、全体の成長率をさらに押し上げるとアイルランド政府はそろばんをはじく。
金融市場の投機的なアタックが続く中でも、自力で輸出主導の回復にこぎ着けてきたアイルランド。これに対し、アイルランドほどの輸出部門を持たない他の重債務国やフランスなどは緊縮財政を急いだため、内需の悪化と失業率の上昇という状況に陥っていた。こうした欧州の潮流もここにきて変化の兆しが見える。
ECB(欧州中央銀行)の無制限国債買い取りプログラム(OMT)や、ユーロ圏が国を通さずに直接銀行に資金注入できるESM(欧州安定メカニズム)が態勢を整えた昨年後半以降、投資家による重債務国の国債売りは鳴りを潜めた。市場のアタックがないなら、財政赤字削減のために無理に財政緊縮を急ぐ必要はない。各国が政策転換する機は熟しつつあった。
そして5月29日、ついにその日は来た。欧州委員会は加盟各国に対する経済・財政政策勧告を発表し、スペイン、フランス、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロベニアの6カ国について財政赤字を3%以下(対GDP比)に削減する期限を1~2年先送りする方針を打ち出した。
加えて、3%以下の財政赤字が定着したイタリア、ラトビア、リトアニア、ハンガリー、ルーマニアの5カ国については「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」の解除を勧告。重債務国中心のこれら11カ国は、今後、歳出削減を緩めることができ、内需が押し上げられる。特にスペインやイタリアは、足元で純輸出が順調なため、全体のプラス成長転換にも弾みがつくことになりそうだ。
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