そして、ギリシャが再び焦点に 景気・経済観測(欧州)

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このようにギリシャ情勢は、連立政権の足並みの乱れや債務の持続可能性が危ぶまれるなど、今も不安要素を抱えている。

欧州の債務危機はこれまで「危機」と「小康」を繰り返してきた。危機がいよいよ極限に近づくと政策対応が打たれる。政策対応で市場が落ち着きを取り戻すと、危機国や政策当局の危機感が薄れ、政策が停滞する。政策停滞により、次の危機のマグマが蓄積し、それが時を経て噴出する。ECBによる新たな国債購入策(OMT)の発表以降、金融市場が小康を保ってきたことで、危機と小康のサイクルの振幅が小さくなってきたが、今もこのサイクルから抜け出した訳ではない。

市場心理が悪化する局面では、ギリシャのみならず欧州各国が抱える政治リスクや銀行同盟を巡るEUの政策停滞などに、改めて焦点が当たる可能性がある。欧州の危機を過去の物と片付けてしまうのはまだ早そうだ。

田中 理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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