ファナックの食品ロボ、3年で5倍成長のワケ 「肝いり」ビジネス、収益の底支え役に

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ゲンコツ・ロボット1号

一方、ファナックといえば、株式時価総額で約3兆4500億円、営業利益率30%以上をたたき出す業界の「猛者」だ。徹底した生産の自動化、かつ標準品の集中生産により高い価格競争力を誇る。自動車工場で溶接や塗装を行う「多関節ロボット」で高いシェアを保ってきた。

そのファナックがゲンコツ・ロボットを引っ提げて、ここ数年狙いを定めているのが食品や医薬品、化粧品の分野である。「三品市場」と呼ばれ、近年の産業用ロボット業界ではひとつのキーワードとなっている。「食品関係の売上高はまだロボット全体(2013年3月期で約1200億円)の10%に満たないものの、年々確実に増えている」(常務理事の加藤哲朗・国内バラ積みロボット販売部長)。

食品業界の省力化、歩留まりニーズに応える

食品業界では、省力化による人件費の削減や歩留まりの向上による採算の改善が至上命題となっている。多くの食品メーカーは、新興国での需要増による原材料価格の高騰に悩まされ、価格に転嫁しようにも大手スーパーなど購買力のある小売りは応じない。そこでメーカー側が自助努力で利益を生み出すひとつの手が、ロボットによる作業工程の自動化。ここに、産業用ロボットにおけるファナックの高い実績と豊富なノウハウが生きるワケだ。

ファナックの足元の業績は、スマートフォンの製造設備余剰でロボドリル(小型工作機械)が低迷、稼ぎ頭のNC(数値制御)装置も振るわない。この局面では、国や産業を問わず、高まるロボットによる自動化需要を取り込んでいくことが、求められている。ファナックにとっての食品ロボットは、単なる「肝いり」だけで片付けられない存在となりつつある。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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