欧州の「新型車両」はいったい何がスゴイのか コンセントは必需品、低床化がトレンドに

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10月11日、京浜急行電鉄が新型車両の一部の座席にコンセントを設けることを発表し、話題になった。他の私鉄でも、座席にコンセントを設けることが発表されており、今後はどの鉄道でも標準装備となっていくのかもしれない。これまで乗客が利用できるコンセントと言えば、新幹線の一部の座席など、優等列車にしかない特別な装備品だったことを考えれば、普段の通勤で利用する車両にコンセントが付くのは画期的だ。

一方、欧州では2000年代半ばには一部のローカル車両にもコンセントが装備されるようになり、現在では付いてない車両の方が珍しい部類となってきた。今回、実車展示をしていた車両では、ほぼすべての車両にコンセントが装備されており、しかも一部の車両はコンセントのみならず、USBポートまで装備されていた。いかに携帯電話利用者の電源需要が多いかということがうかがい知れる。

オーフス市向けトラム車内に設置されたコンセント。近郊車両ではかなり普及したコンセントだが、トラム車両では珍しい

今回、展示されていた車両の中で驚いたのは、シュタドラーが製造したデンマーク・オーフス市向けのトラムだ。一般的に短距離利用者が多いトラムにもかかわらず、一部の座席にコンセントが装備されているのだ。だが、これには理由があった。オーフス市のトラム路線は2017年の完成予定で建設が進められており、総延長は12キロとごく普通の路線。しかし、将来計画の中で鉄道路線への乗り入れが予定されており、実現すればおよそ70キロの営業キロになるという。これならば所要時間を考えてもコンセント装備に納得がいく。

優等列車はWi-Fi装備が標準に

では優等列車はというと、もはやコンセントは標準装備となり、今ではWi-Fi装備も当たり前となっている。今回のイノトランスで展示されていた優等列車用の3車種(トルコ向けVelaro、スイス向けEC250、ポーランド向けDart)は、いずれも乗客用のWi-Fiを装備していた。

現代の優等列車でコンセントとWi-Fiが当然の装備となったことは、車両のリニューアルの際にこれらが追加されていることからもわかる。今から20年以上前の1994年に営業開始した初代ユーロスターは、Wi-Fiどころかコンセントも装備しておらず、車内設備の陳腐化が著しかったが、最近になって更新工事を行った車両は、両方を装備するようになった。

このWi-Fi、各鉄道で搭載され始めた頃は1等車のみ利用可能で、使う際は別料金が必要だった。だが、現在ではたいていの場合、2等車でも無料で利用可能となっている。日本では無料でWi-Fiを提供するという文化はあまりないが、いずれは運賃を支払っている乗客へのサービスの一環として、検討すべき課題になるかもしれない。 

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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