欧州の「新型車両」はいったい何がスゴイのか コンセントは必需品、低床化がトレンドに

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しかし21世紀を迎えると、技術の進歩により、電車や気動車でも低床化が可能になった。多くの場合は前後の車両に動力装置などの機械を詰め込み、中間部分はすべて低床化するという構造で、これは装置の小型化・モジュール化が進んだことで実現した。

西欧メーカーを中心にこうした低床車両の製品化が広がると、その後中欧系メーカーでも研究開発が進んだ。今や、各メーカーが発表している欧州向けの近郊用車両で、低床化されていない車両といえば、日本と同様に高床式ホームが標準の英国向け車両のみとなっている。

遅延防止とバリアフリーの一石二鳥

オランダ鉄道向けに製造されたシュタドラー社の近郊電車。両端の先頭車両部分を除き、全て低床式となっている

路面電車でない普通鉄道向けの低床式車両は、これまで主に近郊列車へ採用されてきた。長距離列車の場合は駅に比較的長時間乗車するため、車両とホームの段差によって乗降に多少時間が掛かっても、遅延の心配はそれほどない。

ところが乗り降りが頻繁にある都市近郊の列車となると、段差のある車体は乗降に時間がかかり、遅延の原因にもなる。加えて、昨今は各国でバリアフリー化が進められており、車椅子がスムーズに載せられることが必要となっている。そこで、低床車両の出番ということになる。

昨今は、長距離列車でもバリアフリーへの対応が必要となっており、今回出展されたスイス連邦鉄道のEC250型は、長距離向け低床車両の例として注目を集めている。同じスイスの2階建てインターシティ客車や、フランスの2階建てTGV(Duplex)も1階部分の床は低いが、これは2階建てという構造上の産物であり、低床化を想定したものではない。

ところで、この流れは日本には関係ないかと言えば、そうでもない。地方ローカル線には、都市圏のホームと比べて少し低いホームが残る路線もある。インフラ側の改修を進めるにはかなりの年月と多大な資金が必要となるが、車両の一部を低床化すれば、こうした問題も解決できる。簡単なことではないが、地方路線のバリアフリー化促進へ向けた一つのヒントになるのではないだろうか。

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