半数以上が「赤字」、三セク鉄道の厳しい現状 都市部の路線は建設費で巨額累損
上越線六日町駅から信越本線犀潟駅を結ぶ同社の路線は、首都圏と北陸を結ぶ重要な連絡線であり、中でも越後湯沢と金沢・福井方面をJR東日本、JR西日本との直通運転によって結んでいた特急「はくたか」はドル箱列車だった。だが、2015年3月の北陸新幹線開業で特急が廃止され、一気に収益が悪化した。
もっとも、過去に積み上げた内部留保は厚く、利益剰余金は86億円もある。都市型に分類されるゆりかもめや北大阪急行電鉄の70億円を上回り、63社中断トツの1位だ。資本金と合わせて純資産は131億円あり、計算上は2015年度の年間赤字6億円が20年続いても債務超過にはならない。
旧国鉄転換型で黒字は5社だけ
旧国鉄転換型31社のうち、経常利益、最終利益ともに黒字なのは鹿島臨海鉄道、愛知環状鉄道、信楽高原鉄道、智頭急行、平成筑豊鉄道の5社だ。
このうち「国鉄再建特別措置法」で、バス転換が適当とされた旧国鉄の赤字路線からの転換組は、愛知環状鉄道、信楽高原鉄道、平成筑豊鉄道の3社。残る鹿島臨海鉄道と智頭急行の2社は、旧国鉄の路線として計画されながら経営悪化で工事が中断し、三セクで引き継いで開業した路線だ。
智頭急行は鳥取県の倉吉駅と兵庫県の上郡駅を結ぶ路線で、開業は1994年12月。開業から1カ月後に阪神・淡路大震災が発生、大きく躓いたが、1998年度に黒字転換して以降は黒字が続いており、2015年度は経常利益4億3600万円、最終利益2億8200万円を計上した。ドル箱は倉吉駅から京都駅まで乗り入れ、山陰と京阪神地区を結んでいる特急「スーパーはくと」だ。
一方、63社中で経常赤字トップとなったのは、18億9300万円のえちごトキめき鉄道だ。北陸新幹線開業に伴い、JR西日本から北陸本線の市振駅-直江津駅間(現・日本海ひすいライン)、JR東日本から信越本線の妙高高原駅-直江津間(現・妙高はねうまライン)の、並行在来線1路線ずつ、計2路線を引き継いで2015年3月に開業した。
2015年度は開業初年度で、営業収益を営業費用が大きく上回った。期初から12カ月フル稼働してこの結果なので、厳しい滑り出しになったと言っていい。沿線人口も減少が進んでおり、環境は厳しい。「リゾート列車などの新しい取り組みによって利用者増、売り上げ増を目指す」というが、累積赤字解消は30年後以降。当分は多額の赤字が続くだろう。
一方、同じ北陸新幹線の並行在来線で、開業時期も同じ2015年3月のあいの風とやま鉄道は経常利益1億2100万円、最終利益7000万円、IRいしかわ鉄道は経常利益7億4000万円、最終利益2億5700万円と、2社とも黒字決算で初年度を終えた。2社とも沿線人口、交流人口ともに多いうえ、あいの風とやま鉄道はJR時代に特急を利用していた乗客が流れ、開業前の想定を上回る利用客数になっているためだ。
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