「逃げ恥」「校閲ガール」心をつかむ3つの理由 ガッキーと石原さとみが可愛いだけじゃない

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一方、悦子は校閲部内で「絶対に『(ファッション誌)Lassy』の編集者になる!」と宣言したり、キレイになった先輩校閲者・藤岩りおん(江口のりこ)に「全部、私のおかげですから」と自画自賛したり、スキャンダルで緊急会見を行う女優に「納得いかないから」と仕事を放り出して会見場に向かうなど、猪突猛進な仕事ぶりが目立ちます。

「わがままな女では?」と思うことなかれ。校閲部の先輩たちも、編集者や営業マンも、作家やおでん屋の常連たちも、みんな悦子に「それ言うかな~」「言っちゃったよ」などと笑顔でツッコミを入れながら親しんでいるのです。

周囲の人々が悦子に親しみを持つ理由は、「人に合わせて態度を変えず、喜怒哀楽を表に出す」ことへの安心感。職場で信用されるのは悦子のようなタイプであり、気軽にツッコミを入れられる隙も含めて、親しみの持てる存在なのです。悦子が迷惑をかけているのに、「これくらいのことならいいよ」と優しく見守られているのは、そういう姿あってのことでしょう。

2人に共通しているのは、思考回路がシンプルで、「ああだこうだ」と考えすぎないこと。それでいて仕事の面では、「ムダなことはしない」という合理性があるため、上司、同僚、取引先など、すべての人にとってコミュニケーションが取りやすい人なのです。現代のオフィスで本当に求められている人材は、みくりと悦子のような存在なのかもしれません。

視聴者が求める「幸福感」と「疑似体験」

3つ目のポイントは、制作サイドのマーケティング。近年、エンタメにおける個人の嗜好は細分化する一方ですが、両作は幅広いターゲットを持つコンセプトを打ち出しました。

「逃げ恥」のコンセプトは、全編を通して漂う幸福感。“契約結婚”というテーマは一見ドライですが、実際に描いているのは、「モジモジしながらも徐々に惹かれ合う」スローテンポで牧歌的なムードの恋模様です。ハイテンポな展開、トラウマや大事件、壁ドンなどの濃厚な恋愛ドラマばかりの中、「逃げ恥」のスローテンポと牧歌的なムードは貴重。ほどよいもどかしさや、悪い人を登場させないなどの工夫で、視聴者を「ゆっくり恋を育む2人をのんびり見守ろう」という気持ちにさせています。

日常生活でのストレスが多く、漠然とした閉塞感が漂う現代人が求めているのは、「逃げ恥」のような“ぼんやりとした幸福感”なのかもしれません。「職場の人間関係が穏やかで、一緒に過ごせる人がいる」「その人との生活は心地いいけど、うまくいかないこともある」「でも好きだと思うし、距離を縮めたいという思いを抱いている」。

「逃げ恥」は、このような「多くは望まないけど、日常の穏やかな幸せがほしい」という視聴者ニーズに応えていることがわかります。今後はドラマだけでなく、多くの商品・サービスにも、この“ぼんやりとした幸福感”がキーワードになるのかもしれません。

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