信金、信組の制度改革論議がスタート  信金、信組業界のあきれた「閉鎖体質」

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実態不明の相互支援制度 開示を拒むかたくなな姿勢

信金中金の経営力強化制度は01年4月に創設された制度で、信金中金が資金を投じている信金の数と残高が、なぜか創設前であるはずの2000年度以前に実行したものからディスクロージャー誌に開示されている。だが、優先出資証券の引き受けだったのか劣後ローンだったのか、支援を受けた信金が優先出資証券を買い戻したり劣後ローンを返済したりした場合の"出入り"も不明で、資金支援を実施した信金の具体名も開示拒否。相互援助資金制度は01年度末で廃止される予定だったはずだが、06年度のディスクロ誌に唐突に制度の存在が記載された。

制度を支える基金は、かつては各信金に対し預金量に応じて一定の割合で信金中金が強制預金を吸い上げ、信金中金の負債側に通常の預金とは別に、「預託金」勘定で計上されていたらしい。この資金は預け入れてきた信金に同額を再度預金し直す形をとり、預金金利の差額を信金中金がプールする形をとっていたようなのだが、預託金そのものが援助資金の原資だったのか、金利差が原資だったのかも信金中金はいっさい説明を拒否している。

00年度末に負債側の預託金勘定と資産側の再預託金勘定に2943億円という金額が計上されたのを最後に、翌年度末に5億2100万円に減り、02年度末以降勘定自体が姿を消したので、この強制預金は各信金に返還したのだろう。

とすれば、現在も残る相互援助制度とはいったい何なのか。経営力強化資金は信金中金のバランスシートのどこに計上されているのかも不明なら、滝野川信金への200億円の支援がどちらの制度で実施されるのかも開示拒否。優先出資証券を株式市場に上場していながらの、このかたくなな姿勢は何を意味するのか。

ディスクロ誌では経営力強化制度による支援実施額は、自己資本の15%以内だというが、01年度以降その15%を上回り続けているとしか読めない。全信組連は相互援助制度とよく似た保障基金制度を持ち、その残高は保障基金定期預金勘定に計上されている。だが、支援は保障基金からだけ実施されるのではなく、やはり支援の全体像は見えない。

今回の議論で最も必要なのは、この前近代的な開示姿勢が象徴する、業界の体質を正す内部統制の議論かもしれない。

(金融ビジネス)

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