信金、信組の制度改革論議がスタート 信金、信組業界のあきれた「閉鎖体質」
2007年度も残すところあと2日に迫った3月28日、信金、信組の制度改革を議論する、金融審議会の第1回目の会合が開催された。
「預金量5000億円を超える信金を地銀に転換させ、税制面での優遇措置を撤廃する方針では」といった報道が相次いだこともあり、当事者たる信金、信組にとっての最大の関心事は、もっぱら税制面での優遇措置が撤廃されるかどうかに集中している。
だが、「金融審議会の場で税制に関する議論を行うということは、その役割上ありえない」(金融庁幹部)との見方が有力で、自民党税調が信金、信組への課税強化をもくろむ動きもない。地方の信金、信組の理事長には各地域の名士が多く、信金、信組への課税強化に動けば票に影響が出かねない。
この審議会は規制改革・民間開放推進会議の答申によって誕生したものでありながら、業界が規制緩和を本気で求めているわけではない。規制緩和と引き換えになにがしかの負担を強化するという方程式が成り立たないのである。
集まった預金の運用先にすら困る状況で、資本政策規制の緩和を強く必要とするはずもなく、制度はないよりはあるに越したことはない、という程度である。
審議会で議論されるテーマの中身とは
地区規制や取引先規制を緩和してもらったところで、地銀、第二地銀、ゆうちょ銀行がすでに不毛な競争を展開している都市部への新規出店など望んでもいない。ゆえに税務面での優遇措置を撤廃されてでも緩和してほしい規制など、信金、信組には存在しない。
審議会誕生の過程で、株式会社型の信金、信組と、協同組織型の信金、信組とがあってもいい、というような、あたかも保険業界を想定したような、信金、信組にとっては「(金融制度調査会の中間報告が出た)18年前に終わった議論」の蒸し返しがあったのも事実だ。
営利を第一義の目的にしない協同組織型の地域金融機関としての信金、信組と、営利を第一義の目的にする地域金融機関としての相互銀行の線引きは18年前に決着済み。監督官庁である金融庁も望まない課税強化など杞憂ではあろうが、だとすると今さら何を議論し、落としどころをどうするつもりなのか、というのが、業界の審議会への視線だ。
「18年前には地銀、相互銀行と信金、信組の線引きについて決めただけで、協同組織型の地域金融機関の役割やその専門性について、突っ込んで議論したわけではない。18年経った今も、本当に必要なのかどうかを確認する、という意味はある」(信金関係者)といった解釈が穏便な落ち着き先ということになるのだろうか。
ただ、信金と信組はその役割にどう違いがあるのか、本当に両方必要なのかという議論に踏み込むとしたら話は変わってくる。信金と信組が併存する必要はないという結論に達すれば、信金による零細信組の救済という議論も浮上する。救済を嫌がる信金、経営の独立を手放したくない信組双方の反発は当然に予想され、18年前の結論を確認するどころではなくなる。逆にいえば、この議論に踏み込んでこそ審議会の存在価値が認められるのではないか。
また、業界がほとんど関心を示していない、上部の中央機関の統治能力向上の問題も議論の展開次第では興味深いテーマになる。
これは、金融機関に公的資金を予防的に注入する金融機能強化法の期限が3月末に切れたことに伴い、資本支援の役割を持つ、上部の中央機関である信金中央金庫、そして全国信用組合連合会の統治能力を向上させようという議論である。上部組織といっても、信金中金と各信金、そして全信組連と各信組の関係は、あくまで対等である。明確な上下関係がある農林中金と各信連の関係とは明確に異なる。
信金中金は経営力強化制度と相互援助資金制度、全信組連は保障基金制度という相互支援制度を持っている。しかし、支援資金の出し手である信金中金、全信組連に監督・検査権限がないので、監視機能を強化する制度的枠組みを検討してはどうかというわけだ。ただ、このテーマも本気で踏み込めば抵抗は必至だろう。業界は今のままで十分というスタンスだからだ。
そもそも現行の制度にはどのくらいの余力があるのかという疑問が湧くのだが、その制度そのものについて、信金中金、全信組連ともにほとんどその実態を開示していない。信金中金に至っては、相互援助資金制度と経営力強化制度の定義上の違いすら説明を拒否するありさまだ。
過去に実施された支援に関する新聞記事を追っていくと、信金中金だけでなく支援を受ける地域の他の信金が支援資金負担を分担していることがわかる。だが、どんなルールになっているのかも信金中金は説明を拒否している。