なぜインベスト・ジャパン政策は不発なのか 鎖国レベルを脱せないただ一つの理由
小泉純一郎首相が2003年に観光立国を標榜し、「2010年に訪日観光客1000万人」を目標とした、ビジット・ジャパン・キャンペーンを開始しました。それから10年後の2013年に海外観光客は1000万人を突破。今年は2000万人を超えることが確実視されています。「インバウンド消費」という言葉は、2015年の「日経MJヒット商品番付」の「東の横綱」に選出され、その年額は約3.5兆円であったとされます。このような状況を2003年に多くの人が予測したでしょうか。
対日直接投資は世界最低レベル
一方、安倍晋三首相が2013年に標榜した「三本の矢」に基づき、政府は「2020年に対日直接投資35兆円」を目標としたインベスト・ジャパン政策を開始しました。しかし、財務省の統計によると2015年の年間対日直接投資は、17.6兆円。GDPの3.3%で、世界でも最低レベルです。さらに、ほぼ同額の金額が日本から引き上げられているので、ネットでほぼゼロという状況です。これは、ほぼ鎖国状態といっていいでしょう。
世の中でメジャーになって、国民が歓迎する「インバウンド消費」、対して国民が誰も認識していない「インバウンド投資」。政府はどっちも促進したいと思っているのに、後者は、いまのところ鳴かず飛ばず、です。このような不発状況の理由は何でしょうか。筆者からみたら、その理由はひとつしかありません。それは、現状のデータを見ればわかります。先ほど2015年の対日直接投資は17.6兆円といいましたが、このうち、M&Aによるものはわずか1.2兆円です。すなわちインバウンド投資が伸びないのは、インバウンドM&Aが少なすぎるからです。
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