サムスンが惚れた、有機ELベンチャーの正体 異例!ライバルLG、JDIもこぞって出資
有機ELの市場規模は1兆5000億円程度だが、「Galaxy」の年間3億台以上の販売量を背景にサムスンが市場シェア9割超を握り、独走中だ(2015年、IHSテクノロジー調べ)。
そのサムスンが採用している発光材料は、希少金属のイリジウムを用いるため、コストが高く採掘可能量が少ないほか、青色が出せず他の材料で補完しなければならないという問題がある。キューラックスはこれらの問題を解決する新材料「TADF(熱活性化遅延蛍光)材料」を研究・開発中だ。
CEOを務める佐保井久理須氏は、現実離れした経歴の持ち主だ。九州大学医学研究科博士号と米国弁護士資格を有し、何と米アップルに買収された「siri」(音声アシストアプリ)のコア技術の発明者でもある。
300回超のミーティングでも、出資はゼロ
佐保井CEOはかつて、創薬ベンチャーのGNIなどを設立しており、キューラックスは4度目の起業になる。
現在、キューラックスは九州大学が持つ特許を独占的に用い、TADF材料を商品化し、ディスプレイメーカーに材料やライセンスを販売することを目指している。大手メーカー各社も新材料を安く手に入れたい思惑から、冒頭の出資に至っているのだ。
ただ、出資までの道のりは容易ではなかった。「300回以上のミーティングをベンチャーキャピタルなどと重ねたが、1円も調達できなかった。材料ベンチャーはおカネがかかるうえ、いつ成功するか見通しが立たず、敬遠された」と水口啓CFO(最高財務責任者)は振り返る。
そんなときにサムスンから出資の打診があった。サムスンはあくまで単独出資を希望したという。未来の最大顧客からの申し出は魅力的だった。しかし、「新材料が市場拡大の起爆剤になることを目指しているため、複数社からの出資にこだわった。また、政府の補助金で研究成果を挙げてきたこともあり、技術を日本へ還元したい思いがあった」(安達淳治CTO=最高技術責任者)という。
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